選択と集中が進む中、トヨタはどう変化するか
そうした変化に対応するために、主要先進国の自動車メーカーの選択と集中が鮮明化した。2019年、スウェーデンのボルボは、いすゞにUDトラックスを売却すると発表した。2021年、ダイムラー(当時)は、トラック事業の分社化と上場を実行した。乗用車ビジネスは“メルセデス・ベンツグループ”に社名が変わった。
合従連衡も増えた。米、伊のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、仏のグループPSAと経営統合し“ステランティス”が発足した。わが国では、トヨタがダイハツ、スズキ、マツダ、スバルとの関係を強化した。ホンダは米GM、韓国LGエナジーソリューションなどとの協業体制を強化している。仏ルノーは、日産の協力を得つつ、電動車事業などの分社化を目指す。
なお、現在、トヨタはエンジン車、HV、PHV、EV、FCVと、乗用車分野で全方位(フルラインナップ)の事業戦略を進めている。ダイムラーとの商用車事業の協業を境に、EVシフトへの対応など、トヨタの成長戦略がどう変化するかは見ものだ。
EV分野の「中国依存」を避けなければならない
トヨタとダイムラーの協業開始をきっかけに、世界の自動車産業の再編は加速する可能性が高い。まず、EVシフトの加速を背景に、新規参入や、新興企業の台頭は鮮明化している。
EV開発、販売競争の熾烈化に対応するために、世界の自動車メーカーにとって経営体力の向上は欠かせない。研究開発や設備投資のリスク負担、景気変動への耐性などを高めるために、異業種を巻き込んだ提携は増えそうだ。
また、EVに関連した分野では、中国企業の存在感が高まっている。共産党政権は国有・国営、および主要な民間企業に、土地の利用許可、産業補助金などを提供した。それは、中国企業の固定比率(売り上げに対する固定費の割合)の低下を支え、世界的に高いシェアを獲得する原動力になった。典型例は、車載用バッテリー世界最大のCATLだ。
一方、主要先進国にとって、経済安全保障の観点から、中国企業に重要資材、部品などの調達を依存することは避けなければならない。雇用の維持も含め、自動車などの分野で直接投資を呼びかけ、自国企業との関係強化につなげようとする国は増えるだろう。それも、世界の自動車産業の再編を加速させる要因と考えられる。