コロナ禍で失業するもプライドとこだわりを捨てられず
ところが、その矢先にコロナが蔓延し、和夫さんが勤務していた飲食店は休業に追い込まれました。折しも、長男は私立高校に進学したばかり。休業は4月、5月と続き、勤務先からの手当も入らなくなり、日中は警備員、夜は知り合いのつてで飲食店のアルバイトをして数カ月間食いつなぎ、一部貯金も切り崩しながら長男の学費も払っています。
就職活動をせず臨時バイトでつないでいたのは、コロナが落ち着いたらまた店に戻って、以前と同じ暮らしができると考えていたから。しかし現実は厳しく、夏の終わりに、ついに勤務先は廃業。和夫さんは解雇されてしまいました。
失業保険をもらっている間に和夫さんは就職活動をしましたが、思うようにいきませんでした。和夫さんは、仕事を選んでいたのです。条件の一つは、前職と同等のポジション。長年かけて主任というポジションまで上り詰めていた和夫さんは、また下っ端からやり直すことに抵抗があった。また、子どもと過ごす時間も大切にしたいからと、飲食店ながら土日と夜の勤務時間が極力少ない仕事を探していました。当然、前職と同じポジションで柔軟な働き方ができる正社員の仕事は、そうそう見つかりません。
「100歩譲ってポジションのこだわりを捨てたとしても、自分の時間は死守したい。収入の高い仕事でプライベートを犠牲にするくらいなら、低くても構わない。生きていければいいんだから」
こう話す和夫さんのように、収入に重きを置かない働き方、生き方を選ぶ人は意外と少なくありません。ぜいたくはしなくていい。金銭的な豊かさを追い求めるより、家族と過ごす時間や、趣味の時間など、「今の幸せ」を大事にしたい。今の生活が維持できればいい――という考え方ですね。
もちろん、その考え方自体否定はしません。ただ、和夫さんの場合、そうすることで、赤字状態が続いていました。貯蓄も、進学を控える子が2人いながら、150万円程度。いざというときの備えとしては心もとない状況です。失業保険が切れたら、生活費や学費はどうするのでしょうか。
そこで、「生きていければいいのは間違いないのですが、これをいい機会にして、収入を増やすことにももう少し注力してもいいのでは」と提案しました。学校で通っているお子さん2人を抱え、4人家族で生きていく場合、低収入のままでは節約にも限界があります。将来の不安も消えません。
お金を増やすためには、3つの柱があります。①「収入を上げる」、②「支出を抑える」、③「すぐに使わないお金を運用する」です。普段われわれは②と③をメインに話すことが多いのですが、①の収入増も非常に大事な要素です。健康な体と時間があり、働ける環境に恵まれているなら、ぜひとも稼いでいただきたい。ましてや、教育費のように数年以内に必ず支払うべき費用があるなら、なおさらです。