メリットは女性を代表にして改革イメージを打ち出すこと

この現象に関するより最近の研究では、強い関連性を示す研究もあれば、その証拠を見いだせない研究もあり、数は多いが混在している。ガラスの崖は、ある特定の状況で起こるものではあるが、いつも起こるというものでもないようである。ガラスの崖は、女性のリーダーシップの歴史がある企業では起こりにくいようでもある。もともと女性リーダーの少ないハイテク業界では、より顕著であると指摘する人もいる。

では、なぜ危機的状況に陥ったときに、女性をリーダーの座に就かせやすいのだろうか。学者たちは、いくつかの理由を挙げている。まず、女性を採用することで、「物事が変わりつつある」「以前とは違うものになる」というメッセージを発信することができる。優しさやコミュニケーション能力の高さなど、ステレオタイプな女性の強みが、危機的状況において重要であるという認識があるのかもしれない。

また、リーダーが意識的に、あるいは無意識的に、物事がうまくいかなかったときに女性をスケープゴートにしやすいと考える、一種の差別が働いている可能性もある。

一方、登用される側からすると、女性は上級職に就く機会を得にくいという事実がある。だから、たとえリスクが高くても、ガラスの崖のような役割に就きたいと思うのかもしれない。

新CEOリンダ・ヤッカリーノ氏は広告営業で実績あり

では、ツイッターのCEOになるリンダ・ヤッカリーノ氏とはどんな人物なのか。実は、この職務には最適な人物のようだ。彼女は、ターナー・エンタテインメントで20年近く働いた後、2011年からNBCユニバーサルの広告営業担当役員として高い評価を受けている。広告の専門家である彼女は、マスク氏の買収以来、怖がって離れてしまった広告主を呼び戻すのに役立つはずだ。

ヤッカリーノ氏は、NBCユニバーサルの市場戦略と全事業の広告収入を監督し、その総額は100億ドル近くに上った。それに比べて、7月に報告されたツイッターの上場企業としての最終四半期の売り上げは、わずか11億7000万ドルだった。そうだとしたら、ツイッターの職務は彼女にとって楽な仕事と言えるのだろうか? いや、実はそう単純な話ではない。

写真=AFP/時事通信フォト
2022年5月2日にニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された2022年メットガラでのイーロン・マスクと、2016年9月28日にニューヨークで開催された「2016 Advertising Week New York」でのリンダ・ヤッカリーノ氏

マスク氏のツイッターでの在任期間は、波乱に満ちている。彼は最近、ツイッターの価値は200億ドルで、自分が支払った440億ドルより下がっていると言った。これは、短期間で途方もない規模の価値破壊である。