ガチャガチャ音を立てるぐらいではもはや驚かない

ショックが大きすぎて、その後、メイン料理、デザートをどんなふうに召し上がったのかは思い出せないほどですが、思えば試食会が始まった時から違和感がありました。私は長年、全国のウエディングの現場を視察してアドバイスを行っており、ブライダルフェアにも数えきれないほど参加しています。この日は中国地方のホテルの視察でした。

通常の試食会は「幸福感に包まれた」と表現するにふさわしい、ゆったりとした雰囲気に満ちています。ところがこの時は、なんだか落ち着きがないと感じたのです。今、思えば、他の参加者もコース料理に慣れておらず、楽しむ余裕がなかったのかもしれません。

スープ皿に口をつけて飲んだのを見たのは初めてでしたが、実はここ数年、ガチャガチャと音を立てて食器を扱ったり、スープを飲む時に音を立てたりするぐらいでは驚かなくなっています。メイン料理に3色のソースが添えられている場合、これは3通りの味わいを楽しむためのものですが、ソースをぐちゃぐちゃに混ぜてしまう方もたくさんいます。

披露宴ができる時点で中流以上のはずだが…

今、披露宴を行うのは30代から40代前半のカップルが中心です。それ以上の40代後半以降の世代はテーブルマナーに自信がなければ、「恥をかきたくない」と知識を得ようとする方が多かったように思います。そうしたマナーを面倒だと感じる一方で、「非日常」「特別感」を楽しんでいる面もあったはずです。

しかし、最近はテーブルマナーを敬遠しているというより、そもそもテーブルマナーに関心がない、もしくはテーブルマナーの存在すら知らないのではないかと思うような方が増えています。

海外のように五つ星ホテル、三つ星ホテルのような明確な格付けはありませんが、日本でもホテルをはじめとするウエディング施設にランクは存在します。あくまでも目安ですが、披露宴を行うホテルやゲストハウスをランク分けするとしたら、招待客60名の場合、Aランクは費用が600万円以上、Bランクは400万〜600万円未満、Cランクは200万〜400万円未満というイメージです。

スープ皿に口をつけて飲んだカップルが参加したのはCランクですが、その中でも上位のホテルでした。そして最近はBランクのホテルでもマナーに驚かされることが増えています。「若者の経済格差」と関連付けたくなりますが、そもそも今、披露宴を行えるカップルは経済的にある程度余裕がある「中流」以上なのです。