電子レンジを過信してはいけない

【Q】私は、前の日の晩におかずを全部弁当箱に詰めて、冷蔵庫に入れています。朝、ふたを空けずにそれを持って出勤し、食べる前に電子レンジで温めて食べています。こんなやり方も危ないですか?

【A】殺菌するには、食品の中心部が75度で1分以上になるように加熱する必要がありますが、さまざまな食材が入っている弁当は加熱ムラが起こりやすく、この条件を満たせないかもしれません。

それに、細菌の中には、生きたままヒトの体の中に入って増えるタイプのほか、食品中で増殖する際に毒素を作っているものがあります。電子レンジでまんべんなく加熱すれば殺菌はできるかもしれませんが、毒素は加熱では無害化できません。

前の晩に作り、それを昼に食べるというのは、細菌が増殖できる時間が長いということ。市販弁当の多くは、細菌汚染や増殖を防ぐ手立てを講じたうえで、おいしく食べるために電子レンジで温める仕組みです。家庭では細菌対策は難しく、電子レンジでの加熱殺菌も不十分なのですから、やっぱり、朝にしっかり加熱殺菌して急冷して、という基本を守ることをお勧めします。

市販の弁当を表示通り、電子レンジで500W、1分45秒加熱した。加熱ムラがあり、白飯、おかずともに40~60度程度の温度上昇にとどまった(出典=食品安全委員会「加熱調理の科学的情報の解析及び画像の開発」)

おにぎりは素手で握ってはいけない

【Q】おにぎりは素手で握ってはいけない、とよく聞きます。心配しすぎのように思うのですが。

黄色ブドウ球菌(出典=食品安全委員会)

【A】人の手、とくに切り傷にはよく、「黄色ブドウ球菌」がいます。黄色ブドウ球菌が先ほど説明した毒素を産生する菌なのです。熱いご飯を素手で握ってもし、黄色ブドウ球菌が付いてしまったら、増殖して毒素を作り食中毒につながります。おにぎりはラップや手袋を使って握ってください。

細菌による食中毒を防ぐ3原則は「付けない」「増やさない」「やっつける」です。自然解凍で食べられる弁当用の市販冷凍食品は、細菌を「付けない」条件をクリアし、弁当を低い温度に保つ、という点で「増やさない」に貢献しています。細菌の科学を理解し、お弁当を安全に食べましょう。

(本稿は、所属する組織の見解ではなく、ジャーナリスト個人としての取材、見解に基づきます)

〈参考文献〉
日本冷凍食品協会・自然解凍冷凍食品
東京都食品安全FAQ・弁当用そうざいの冷凍食品を冷凍のまま弁当に入れても大丈夫ですか?
花王・[くらしの現場レポート]家族の健康を守るため キッチンの意外な汚れに注意!
岡崎貴世,台ふきんと食器用ふきんの微生物汚染状況;四国大学紀要,B42:13-16,2015
西野由香里ら,都内で販売されている自然解凍冷凍食品の細菌学的調査;東京都健康安全研究センター年報,71:147-152,2020
内閣府食品安全委員会オフィシャルブログ
食品安全委員会調査事業報告書「加熱調理の科学的情報の解析及び画像の開発

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