細切れになった分譲地を誰も欲しがらない

近年はやや下火になっているようだが、数年前まで、千葉県の北東部は、その地価の安さから、遊休地や耕作放棄地が次々と太陽光パネル基地に転用されてきた。筆者が踏査を行っている分譲地の区画の中にも、小規模な発電設備が設置されるケースはあるにはある。

しかし、多くの太陽光事業者は、むしろそうした旧分譲地を避ける形で、最初から広大な遊休地を取得してパネルを設置している。広大な敷地が欲しいのであれば、そんな売地はいくらでも見つかる中、わざわざ細切れになった分譲地の地権者一人ひとりと交渉を進めて用地を取得することに何らの合理性もないからだ。

この分譲地の周辺では現在、銚子連絡道路の延伸工事が行われている。延伸にあたって横芝光町役場では、周辺の農地を、インターチェンジを活用した産業用地へと転換すべく計画を進めているが、この分譲地はその計画用地にも含まれていない。

道路用地としても、事業用地としても需要のない分譲地。地価の上昇を見込んで購入したはずの分譲地が、その特性ゆえに、周辺よりもかえって訴求力や資産性が著しく劣る結果になろうとは、なんという皮肉な話だろうか。

筆者撮影
分譲地の道路から、銚子連絡道路の延伸工事現場が見えるが、この分譲地はその延伸予定地には含まれておらず、町が計画する産業用地への転換の予定もない。

お膳立てされたバブル時代の「投機商品」の末路

こうした分譲地の購入者をただ嗤うのは安直な話だとは思うが、一方で筆者は、これらの土地の半数が、高額のローンを組んで購入されたものであるということに戦慄せんりつを禁じ得ない。おそらく購入者としては、たとえローンを組んででも、こうした土地の購入が一つの資産形成の手段として有効であると判断し、購入に踏み切ったのであろう。

もちろん、投機の結末があらかじめ予測できるのであればだれも苦労しない。それにしてもこの分譲地は、造成工事を行い、上水道まで敷設したうえで、その費用がすべて販売価格に上乗せされている。それでも投機目的で購入する人がバブル期には大勢いたのだ。

当時はそういう時代だったのだ、と言ってしまえばそれまでかもしれないが、今でこそ土地神話そのものは色あせてはいるものの、「資産形成」の言葉に惑わされ、得体のしれない投資・投機商品に手を出してしまい多額の損失を出してしまう話は後を絶たない。実際に今回紹介した分譲地の購入者の中には、分譲地を差し押さえられた人や転居を余儀なくされた人もいた。

投資の失敗事例には世論も冷淡で、一時的にニュースになっても、その後しばらくすれば風化してしまうのが通例だが、土地の場合は、その後も爪痕が永く残されてしまう。

千葉県の限界分譲地は、お膳立てされた「投機商品」なるもののうさんくささに、もう少し敏感になっても良いのではないか、と思わせてくれる。

筆者撮影
すべてお膳立てされた「投機商品」というものが持つ危うさを、この分譲地は今に伝えている気がしてならない。
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