素晴らしき女性陣が作り上げた良質ドラマ2本

8位 川口春奈

「silent」(フジ)30点。

10月期に最も話題を呼び、ロケ地巡りや手話の魅力などの社会現象まで報じられたのが「silent」。間違いなく彼女の代表作になった。

写真=フジテレビ「silent」公式サイトより

耳が聞こえなくなりつつある元彼(目黒蓮)のために手話を学び、言葉を尽くして気持ちを伝えようとする必死さが愛おしくて。春奈がほぼ毎回涙を流すのだが、その種類の多さと表現の豊かさに感服した。「天魔さんがゆく」(2013年・TBS)で無邪気に白目むいて笑いを誘っていた頃を懐かしく思う。朝ドラは、まあ、ほら、わやだったから……。

7位 長澤まさみ

「エルピス」(フジ)30点。

スキャンダルで落ち目の女子アナという役どころで始まる「エルピス」。傍若無人に正義をふりかざす強靭きょうじんなヒロインではないところが魅力的だった。

長澤が本来もっている品の良さは、理不尽が横行する組織の中で抵抗しつつも、立ち位置をわきまえるアナウンサーにぴったり。権力に媚びる悪習にバッサバッサと斬りこむのではなく、自問自答を繰り返して心がずっと揺らぎっぱなしのヒロインは難役。組織に属する大人の鬱屈うっくつを語るナレーションも、劇中で歌った「贈る言葉」も良質。

良作の中で適役。一点突破でランキング入りが多いが、ここまででふと気づいたことが。実は、監督や脚本家が女性の作品が多い。女性の描き方に矛盾や破綻や思い込みが少ないのかもしれず。2022年ドラマの特徴のひとつといえそうだ。

恵まれない環境を演じさせたら日本一

6位 満島ひかり

「First Love」(Netflix)30点、「初恋の悪魔」(日テレ)5点。計35点。

「First Love」の配信で一気に浮上。満島の魅力がこの作品に凝縮されていたように思う。初恋の相手と運命の再会を果たすが、そこに至るまでの紆余うよ曲折はかなりやるせない。

美人で聡明そうめい、将来有望だった女子があることを機に、恋人と離れ離れになり、不幸と不運の連続。破れた夢、家柄の合わない結婚、シングルマザーの苦悩、職に就けない経済不安。健気な満島が頑張れば頑張るほど、残酷な試練という歯車の音が聞こえてくるような。そういえば「初恋の悪魔」では、家出少女を無償で支援するも、不当逮捕される不運な役。恵まれない環境を背負わせたら日本一ね。