自治体のジェンダー・ギャップ指数を読み解くには

このうち政治分野のジェンダー・ギャップ指数を見ると、男女平等度が高いトップ5は東京、神奈川、千葉、栃木、京都。ワースト5は宮﨑、鹿児島、石川、大分、青森という結果になっています。これだけ見ると、皆さん「やっぱり都市部は平等度が高くて地方は低いよね」と感じることでしょう。

しかし、中身を細かく見ていくと、そう単純な話でもありません。実はこうして指数化すると、人口が減りつつある地域はどうしても不利になってしまうのです。人口が増えている都市部は新しい議席も増えるので「じゃあここに女性候補者を立てよう」となりやすいのですが、人口が減っている地域では議席も減りますから、女性候補者が新たに入ろうとしてもそもそも空席がないのです。

だからこそ今回、熊本や鹿児島などで女性候補者が躍進したのがどれほどすごいことか。他方で、京都や神奈川は府県議会の女性割合が2割程度で、統一選でもほとんど変わりませんでした。今後は2割の壁をどう突破するかが課題になると思います。

撮影=プレジデントオンライン編集部
2023年4月6日、横浜市内。神奈川県知事選と県議会議員選挙の掲示

女性候補者は男性に比べればまだまだ少数ですが、ひとたび選挙に出れば強い。有権者の中には、今の日本に閉塞感を抱いていて新しい政治を求めている人もたくさんいます。女性候補者は、こうした人々の「新しいことをしてくれそうな人に投票したい」という思いに応える存在なのです。この期待感も、今回の選挙における女性候補者の大量当選につながったのではないでしょうか。

女性候補に期待が集まるのはアウトサイダーだから

しかし、「女性なら新しいことをしてくれる」「きっと日本の政治を変えてくれる」という期待感は、政治の場に圧倒的に女性が少ないという現状の裏返しでもあります。これは海外でも同じで、女性政治家自体が今の政治へのアンチテーゼのシンボルであり、アウトサイダーだからこそ人々は期待するわけです。

本来めざすべきなのは、女性がアウトサイダーではない社会。旧来の男性的な価値観だけで行われる「男性政治」は世界各国共通の課題ですが、解決に向けた動きを見ると日本は突出して遅れています。世界の変化のスピードについて行けていないというか、本当に時差が激しいですね。

2023年1月に刊行した『さらば、男性政治』(岩波新書)は、そうした現状や背景を分析・考察したものです。ここで言う男性政治とは、妻がいて家事や育児などのケア責任を免れている「ケアなし男性」だけで営まれ、新規メンバーも基本的にはそうした男性だけが迎え入れられ、それを当たり前だと感じる政治の在り方を指します。