ウクライナはこれを効果的に迎撃し、電力網をほぼ維持することに成功した。しかし同誌は、「その過程において、ウクライナの防空能力は甚大な損耗を生じた」と指摘している。

これにより、ウクライナの地上戦に大きなインパクトを与える事態が予想される。西側の当局者はニューヨーク・タイムズ紙に対し、ロシアは戦闘機や爆撃機を安全にウクライナ領空へ侵入させることができるようになり、ウクライナ地上軍は甚大な打撃を受ける展開が懸念されると語る。

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ロシアから膨大な数の爆撃機が解き放たれる

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)でミサイル防衛プロジェクト担当副所長を務めるイアン・ウィリアムズ氏も、同様の見方だ。タイム誌に対し、「ウクライナの防空能力が徐々に失われ、交戦能力がない水準にまで落ちこめば、ウクライナ領空にロシアの航空機が戻ってくるおそれがあります」と語る。

「ウクライナの戦果はこれまでのところ、その防空能力によってもたらされてきました。……ですから、これは危険なのです」

英シンクタンクの王立防衛安全保障研究所(RUSI)のシッダールタ・コーシャル研究員は、タイム誌に対し、「備蓄が致命的に減少したならば、(ロシアの飛行機は)前線を越え、現在よりも大幅に自由に活動する余地が生まれます」と指摘する。

CSISのウィリアムズ氏は同誌に対し、「もし突如として、航空機の損失率が許容範囲内に収まるようになったのならば、それは大きな変化をもたらし、ロシアが保有する膨大な数の爆撃機が解き放たれるでしょう」との予測を示した。

こうした流出文書は、ウクライナの厳しい戦況を明らかにするものだ。ニューヨーク・タイムズ紙は、「同国政府が公に認めている以上に、ウクライナ軍が悲惨な状況にあることを示唆」するものだと指摘している。

西側の最新兵器は一部で取り入れているだけ

米FOXニュースは4月13日、ウクライナ防空隊を「空の守護神」として活躍を報じながらも、その厳しい現実を取り上げている。同局が戦場で同行したある23歳男性の兵士は、ミサイルやドローンの飛来警報を受けて配置に就き、ソ連時代の牽引式の対空機関砲であるZU-23を放つという。

部隊ではアメリカ製対戦車ミサイルのジャベリンやスティンガーなど、西側の兵器も取り入れている。しかし、多くは旧ソ連時代の兵器に頼っているようだ。ZU-23については、この兵士自身の年齢よりも3倍も古いという。

兵士はFOXニュースの取材に対し、自爆ドローンなどを撃墜するうえでZU-23が効果を発揮している一方、射程が短いことから、一定距離を置いたロシアのヘリや航空機に対しては無力だとも語った。

「これらは時代遅れの兵器ですので、もっと近代的で技術的に発達したものが必要なのです」