本社ビルを京セラより5メートル高くしたワケ

京セラが本社ビルを建てたとき、高さが95メートルでした。それからだいぶ経って、僕は100メートルの本社ビルを建てました。そんなもの、ビルの高さを競争してどうするんだ、なんですけど、ビルはつくった後に上につなげないですからね(笑)。

超えることを前提にしてね、先にビルの高さを100メートルにしておこうということで、今の本社をつくったんです。

何かにつけて、京セラが何をしているか、稲盛さんがどういうことを発言して、どういうことをやっているかということについて絶えず情報をとっていました。売り上げ、利益もチェックした。いやもう成長もすごいわけですね。

年が12歳違って、京セラは創業が14年早かった。普通にしていて追いつけるはずがない。ちょうど本社の僕の部屋から、京セラのビルは真正面に見えるんですよ。電気がついているかどうかまではわかりませんけど、望遠鏡があれば見える(笑)。あ、まだ残ってやっておられるな、とわかったら、これは絶対に先には帰れないなと思ってね。

とにかく京セラに追いつけ、ですよ。もっといえば、追い越せ、でした。もちろん、そんなことは稲盛さんには言いませんが、京セラを追い抜くことが心の中での目標でした。稲盛さんは、ご存じだったかもしれませんけど。

「こういうことを徹底しなかったら、京セラは抜けないぞ」

本社ビルができたとき、稲盛さんは見に来てくださったんです。「中、見せて」とおっしゃってね。「お前の部屋も全部見せろ」と言われて。

それで見せたら、こう言われたんです。「なんだ、お前のとこは、植木をこんなに並べてるのか」

本社ビルの新築祝いにもらったんですよ、と言うと、こう返されました。

「これ、毎日、誰が水をやるんだ。枯れたら、誰が捨てに行くんだ。いっぺん、私のところに見に来い。生木は一本もないぞ。全部、造花だ」

それも、もらったもので、コストはゼロ。造花だから水もやらなくてよい。枯れることもないので、捨てに行く必要もない。こうズバッと来るわけですよ。

「こういうことを徹底しなかったら、京セラは抜けないぞ」

その後も、ビルの中をずっと見て歩いて、「なんだ、こんなことをしてるのか」「これは無駄だなぁ」というような話をさんざんされるわけです。でも、僕からすれば、なるほどなぁ、と感心することが多かった。たまたまビルの竣工しゅんこう式に来てもらって、そこでも多くの学びを得たんです。

お祝いにやって来て、そういう手厳しいことを言ってくれる人がどのくらいいるか、と思うわけです。だから、なるほどと思ったことは、すぐにやりました。まずは同じレベルに持っていかないといけない。そうでないと、勝てないですから。