手をこまねいている間にユーザーは1億5000人に増加
一方、ティックトックの禁止は、人々の言論の自由を制約する恐れがある。中国アプリ禁止に関する一連の大統領令の法的根拠は弱いとみなされ、裁判所に一時差し止めを命じられた。政権交代もあり、一時的にソフトウエア分野における米国の対中規制強化の取り組みは遅れたように見える。
その後もティックトックは、美顔加工を施す“ボールド・グラマー”などのソフトウエアを開発し、若年層を中心にユーザーを増やしている。ロイターの報道によると、米国におけるティックトックの月間のアクティブユーザー数は、2020年の1億人から2023年3月時点で1億5000人に増加した。
2023年2月、中国が観測用と主張した気球が米国の領空内に侵入し、撃墜される事案も発生した。それによって、米国のデータが中国に、より大規模に流出し、経済安全保障体制が脅かされるという懸念は一段と高まった。
CapCut、Lemon8、Temu…米国を席巻する中華アプリ
足許、米国では、バイトダンスが提供するティックトック以外のアプリの人気も高まっている。その一つが、動画編集アプリの“CapCut(キャップカット)”だ。キャップカットはバイトダンスが開発し、ティックトックの兄弟アプリとして利用する人が多い。
ウォールストリートジャーナルによると、キャップカットは米国で最も人気を集めているアプリの一つだという。また、バイトダンスはファッション、グルメ、肌のケア、インテリアなど新しい生活様式を提案し、シェアするためのアプリである“Lemon8(レモンエイト)”もリリースしている。さらに、米国では中国企業が開発したネット通販アプリ、“Temu(ティームー)”なども人気を獲得している。
一方、米国では、メタやツイッター、アマゾンなどの業績が悪化し、大規模なリストラが実施されている。ユーザー獲得ペースだけを見ても、米国やわが国、欧州委員会などの当局にとって、中国へのデータ漏洩、流出の懸念は追加的に高まりやすくなっている。