各国が警戒する中国の「国家情報法」とは

2017年6月、中国共産党政権は“国家情報法”を施行した。それは、米国などが中国のIT先端技術への警戒を強める一つのきっかけになった。

特に、国家情報法の第7条には、“いかなる組織及び国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助、協力を行わなければならない”と記された。また第7条には、“国家の情報活動に対し支持、援助、協力を行う個人及び組織を保護する”との記載もある。

額面通り解釈すると、もしバイトダンスが共産党政権からデータの提供を求められた場合、応じなければならない。状況によっては、共産党政権がIT先端企業に海外のユーザーに関するデータの提供を指示し、見返りとしてデータを提供した企業が補助金などを支給することも考えられる。国家情報法の施行によって、21世紀の経済、政治、さらには安全保障にとってデータの重要性は一段と高まったといえる。

ソフトウエア分野で米国を上回る競争力を身に付けた

その後、米国は先端分野で中国への圧力を強めた。2018年の春以降、米国政府はZTEやファーウェイなどのメーカーに制裁を科した。規制の対象はソフトウエア分野にも及んだ。

2020年8月以降、トランプ前政権は中国企業が開発したアプリの利用を禁止する大統領令を出した。具体的に、ティックトックに加え、テンセントの“ウィーチャット”、アリババの“アリペイ”など8つのアプリが対象になった。また、トランプ政権はバイトダンスに対して米国企業にティックトックの運営会社を売却するよう命じた。米国政府の圧力強化に対応するために、一時、バイトダンスは完全に米国人投資家が株式を保有する形での運営体制の構築を目指した。

現時点で、最先端分野の半導体やその製造装置などの製造技術、知的財産などの点で中国の実力は米国には及ばないといわれている。しかし、スマホの登場をきっかけに世界全体に急速にしたアプリ開発などソフトウエアの分野で、中国は米国の先端企業を上回る競争力を発揮し始めたといえる。それだけに、米国の政治家にとって中国アプリの普及を早期に食い止めなければならないという危機感は強まった。