中国の若者たちの感情の裏側に隠れている恐怖

もう一つの精神潔癖症の表れは相手を拘束することだ。前述した通り、近頃の中国のカップルの間ではいかなる秘密もご法度だ。スマホのパスワード公開はもとより、GPSによる位置情報の共有も一部では「普通」になっているという。

斎藤淳子『シン・中国人 激変する社会と悩める若者たち』(ちくま新書)

さらに、コントロール欲が強い場合は、パートナーのスマートフォンのアドレス帳にある異性の連絡先を消してしまうこともあるという。こうなってくるともはや神経症スレスレだ。

猜疑心が強く、自分が願う通りに相手が自分を大切にしてくれないのが怖く、傷つきたくないと思うあまりに、先に相手を束縛してしまう。これでは健全で持続的な二人の関係を築けないのは火を見るより明らかではないか。かえって自分を孤独に追い込んでしまうだろう。

心配性で傷つくのが怖い。これは人との新しい関係を築く際に世界中の誰もがぶち当たる感情のハードルなのかもしれない。中でも、急速に「潔癖さ」を求めるようになった中国の若者たちの感情の裏側にはこんな恐怖が隠れているようだ。

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