堀江から甘い汁を吸っていたリーマン・ブラザーズ

検察は堀江主導を印象づけようとしていたが、これにもずいぶん無理があるように筆者には思える。東京地裁の判決文にも「検察が主張するように、被告人が最高責任者として本件各犯行を主導したとまでは認められない」と明記されている。

一方で当時、堀江社長のまわりには、金儲けを目的とした連中が数多くいた。2008年に破綻した米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズもその一つである。

リーマンの社員は、稼ぎに応じて支払われる多額なボーナスのためにあらゆる手段をろうし、堀江から甘い汁を吸っていた。

写真=iStock.com/Fabrice Cabaud
米国の大手証券会社リーマン・ブラザーズもその一つ(※写真はイメージです)

例えば、ライブドアがリーマン・ブラザーズ主幹事で発行した、特殊な転換社債を利用して儲けたのだ。

リーマンの法人部は、堀江の所有するライブドア株を「担保にするから」などのさまざまな理由を付けて借り入れ、それを売って儲けていた。その転換社債は、発行後に株価が下落すれば転換価格も下方修正される仕組みの、いわゆる「MS型転換社債」だった。

10億円のボーナスを手にした者もいた?

当時、リーマンは、それぞれの部署の利益の一定のパーセントがボーナスとして支給される給与体系になっていた。

リーマンの日本法人の法人部は、ライブドア株式を売却して儲けた。リーマンにはリスクがないからくりになっていて、その手法で100億円以上の利益を上げ、担当幹部の中には10億円のボーナスを手にした者がいたなどの噂も流れた。

その後、転換価格が下方修正されるような特殊な仕組みの転換社債の発行は禁止された。

前述の『勝ち組に学べ!』も、2005年の出版時はある程度売れていたが、翌年1月に堀江が逮捕されて以来、売れ行きが細ったこともあり、「ライブドア事件」は鮮明に筆者の記憶に残っている。

時代は流れ、その堀江も、今では元気にメディアにも出演し、民間ロケット開発など新しい夢を追いかけている。