「目立つな」「偉くなるな」「わきまえていろ」と育てられる

【田嶋】「小さく小さく女になあれ」はまさに男らしさ・女らしさの話でね。さんざん迷って「愛という名の支配」にしたの。

【アル】「小さく小さく女になあれ」は、子どもの頃から田嶋先生が言い聞かされてきた呪いの言葉ですよね。

【田嶋】当時の女はみんな「小さく小さく女になあれ」式の教育をうけて、私はそれを真面目に聞いちゃったから結構大変だった。

【アル】女は男より目立つな、偉くなるな、わきまえていろ、と育てられる。先生が30年前にそれを書いてくださったから、私たちは「同じ苦しみを経験して乗り越えてきた先輩がいる」と勇気づけられたんです。後輩たちの行く道を照らしてくださり、ありがとうございます(合掌)。

【田嶋】でも今の若い人が読むとまた違う感じでしょ?

【アル】20代の女の子も『愛という名の支配』を読んで「めっちゃわかる!」と膝パーカッションしてましたよ。この本が書かれたのは1992年ですが、日本はその頃から男女平等があまり進んでないので、今読んでも共感の嵐なんだと思います。

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なぜ「男嫌い」にならなかったのか

【アル】先生は「自分は男嫌いではない」とおっしゃってるじゃないですか。フェミニストとして最前線で闘ってきて、男社会で男からあれだけ叩かれてきたのに、なぜ男嫌いにならなかったんですか?

【田嶋】男の人も表面的な付き合いだと色々なことをやってくるんだけど、ちゃんと深く付き合うと人間なんだよ。

【アル】こいつも結構良いところあるな、みたいな?

【田嶋】良いところだけじゃなくて、弱さも強さも、人間として深く付き合うと見えてくる。泣きたいときは涙を見せるし、甘えてくるときもある。ごく普通の人間の姿が見えるのね。

でも同居して生活を共にしたりすると「男」を出してくる。人間から男になっちゃったときは「この野郎!」って思うんだけど(笑)。

【アル】たしかに、男の鎧を脱げない男は多いですよね。弱さを見せちゃいけないと思って、自分で自分を苦しくしてる。

【田嶋】でも恋人ぐらい深い関係になると、男の人もさらけ出すことがあるでしょう。そういうときに「やっぱり一人の人間だな、愛しいな」って思うの。

【アル】おお……人類愛ですね!

【田嶋】そんなにデカいもんじゃないけど(笑)。男も鎧を脱げば一人のか弱い人間だけど、頑張って生きてるんだなと思える。あなただってパートナーのそういうところを見てるから16年も一緒にいるんじゃない?

【アル】夫は全然かっこつけない人なので、最初から全裸でした。だから私も「女らしさ」の鎧を脱げたんですよ。

ただ、私を含めて多くの女性は男性に傷つけられてますよね。子どもの頃から痴漢に遭って、セクハラやモラハラやDVなどの被害に遭って、そのトラウマから男性に嫌悪感や恐怖心を抱くのは自然な反応だと思います。だって犬に噛まれて大ケガしたら、犬が怖くなって当然ですよね。