カスタマイズされたスタバのドリンクに注文殺到
このほか、TikTokが消費行動を加速する例は数多く見られる。英ガーディアン紙は、TikTokでブームになったぬいぐるみの売上がイギリスで300%という驚異的な増加を見せたと報じている。
動物をデフォルメしたぬいぐるみの「スクイッシュマロ」が10代少女のユーザーを中心に爆発的な人気となり、同紙によると関連動画はTikTokで90億回以上再生されていたという。
よく知られたチェーン店も、TikTokの恩恵に与っていることがあるようだ。米業界誌のレストラン・ニュースは、ドリンクをカスタマイズ形式で提供している米スターバックスの売上が昨年、10億ドルを突破したと報じている。
売上はミレニアル世代とZ世代の顧客が牽引しており、とくにカスタマイズの幅が広いコールドドリンクは、若い世代ほど注文する割合が高いという。ソーシャルメディアで目にした「シークレットメニュー」を試したいという心理が、この傾向の一翼を担っているようだ。
もっとも、TikTokに限らず動画プラットフォームのコンテンツは、インフルエンサーによる広告案件動画との区別が付きにくい。なかにはこうした傾向に疲れを感じる若者もいる。米カルチャー誌『ポップシュガー』のイギリス版は、「#deinfluencing(脱影響力)」のタグが流行しており、世界で合計1億回以上再生されていると報じている。
このタグのコンセプトは、ファッションブランドなどの過剰な消費を煽る動画に反旗を翻すものだ。買うべきものではなく、実際の価値に見合わない高価なブランド品など、「買うべきでないもの」を伝えようという試みになっている。
SNSでは「怒り」が拡散しやすいけれど…
このような反動が一部では起きているものの、TikTokから生まれるブームの波はとどまるところを知らない。TikTokの強みは、商業色の強いコマーシャルとは異なり、ストーリー性のある動画を通じてユーザーの感情をかき立てることができる点にある。
これが悪い方に働いた事例に先に触れておくと、回転ずしチェーン店を舞台に炎上事件を挙げることができるだろう。動画投稿者の常識を逸脱した行動は、視聴者の怒りと不快感をかき立て、ユーザーたちによって繰り返し拡散されることとなった。怒りは、最もソーシャルメディア上で最も伝播しやすい感情だと言われる。