左遷ではなく、一時的なポスト待機
さて、A課長ですが、状況からすると、本人に問題があって外された、左遷されたということではなさそうです。後任のBさんは35歳。着実な仕事ぶりのA課長を外してまで早く登用しようとしたわけですから、Bさんは将来を嘱望されている人だろうと想像できます。Bさんの昇進を優先したわけです。
若手の優秀人材を登用したいと思っても、着実に役割を果たしている現任者を外す決断ができない会社は多くあります。その意味では、あなたが勤める会社には、適所適材や新陳代謝を進めていこうという意思が感じられます。こうした場合、人事部はまず現任者が力を発揮できる異動先ポジションを確保したうえで、若手の昇進を行おうとするものです。それが多くの人事部の行動原理です。
おそらく、A課長も異動先の事業部で相応のポジションを得るだろうと思います。担当課長は、次のポジション登用までのタイムラグ、一時的なポスト待機なのではないでしょうか。
A課長の今後については、それほど心配する必要はないように思います。むしろ、あなたの会社の人事部は、やるべきことをやる人事部だということで安心していいかもしれません。
同じ部門にいるべきか、他部門を経験すべきか
A:課長昇進では、確かに、係長クラスの人がそのままその課の課長に昇進するというパターンが大半でしょう。課長昇進で着任する最初のポストが、まったく未経験の仕事というケースはほとんどないだろうと思います。課長は実務推進の要であり、時にはプレイングマネージャーの役割を要求されることもあるからです。
ただ、若年層では何らかの育成的なローテーションを行う会社が多いので、新入社員からずっと同じ部署で長く勤務している人が有利ということではありません。係長クラスを務めた部署で課長に昇進することになりやすいというだけです。
あなたは、そこからさらに部長・役員と昇進していきたいとの希望をお持ちなのですね。課長登用の論理は比較的シンプルで、専門分野の実務能力に長けたマネージャーを求めているわけですが、部長は課長の延長線上ではありません。
ヒアリング調査では、「課長の昇進基準と部長の昇進基準は違う。課長として専門能力があって実績優秀だからといって部長になれるわけではない」というコメントが多くの会社の人事部から聞かれました。部長にはジェネラルなマネジメントの視点が必要だとの指摘です。また、部長のキャリア採用を行っている会社からは、課長は内部昇進でもいいが部長ポジションには新しい血を入れて改革をスピーディに進めることを期待しているという声も聞かれます。