禅譲失敗・空中分解する可能性もある
そうした中で再び、大川隆法氏が登壇する大集会が東京ドームで再開したのが2017年8月のことだった。当時、筆者も現場取材した。この講演会は、幸福の科学の出家信者で女優の清水富美加氏(千眼美子氏)のお披露目も兼ねていた。
大川氏の熱の入った演説と、信者5万人を埋める会場の熱気は凄まじいものがあった。約45分にわたる大川氏の演説は最初、静かに始まり、最後は絶叫調で締め括るのが特徴。会場はスタンディングオベーションで、感極まって泣いている信者もいた。同教団の信仰の力の大きさは、まだまだ健在であることを思い知った。
しかし、それもカリスマ教祖が健在であってこそ。幸福の科学は近年、後継者と目されていた長男宏洋氏らが教団を離脱。大川氏の元妻も教団から追放され、離婚するなど家庭内でのゴタゴタが続いていた。宗教教団にとって、内輪の混乱は組織を分断させ、求心力を失わせてしまうのが常だ。
今のところ、大川氏ほどのカリスマ性をもった指導者が同教団には見当たらないのも、同教団の今後の不安材料である。
新宗教全体に目を転じれば、取り巻く環境は既存宗教以上に厳しい。近年、新宗教が急激に信者数を減らしている。「諸教」にカテゴライズされている新宗教の場合、1995年の調査では1111万人いたのが、2022年には711万人にまで激減している(文化庁調べ)。戦後の新宗教設立ラッシュ時代に入信した信者が、高齢・死亡期に入っているのだ。そして、次代に継承できずにいる。
幸福の科学も然り。たとえば幸福の科学の政治団体「幸福実現党」の得票数は、教団の組織力のバロメーターだが、近年は低迷を続けている。2009年の総選挙では比例区の合計得票数は約46万票だったが、2017年では約29万票程度。得票率も衆参両選挙ともに、1%を大きく割り込むケースが増えている。
旧統一教会問題から端を発した「宗教二世問題」も、幸福の科学にとってはネガティブ要素。今後の教団運営に、少なからず影響していくと考えられる。
筆者が今後注目するのは、大川氏の葬儀がどのような形態・規模で行われるか。その流れで故大川氏を神格化させつつ、いかに後継者を選んでいくか。禅譲が失敗すれば、教団は空中分解することも十分、考えられる。「教祖急死」の混乱を収める組織力が、いまの幸福の科学にあるか、どうか。