待機室で発狂しつつも元気に働く女性たち

ホス狂いで溢れるAはどんな様子なのか。アユが語る。

「私はAの待機室を“ホス狂いグラチャン大会”って呼んでます。ただでさえ風俗の待機室はトラブルが多いんですから、グラチャン大会はもっとすごい。ホス狂い同士のマウントの取り合いでかなり殺伐としてますよ」

Aの場合、店で稼いだ額=ホストで使う額であるため、店のなかでは稼ぐ者だけが正義である。これはゆるぎない。またエースが集まるとはいえ、なかにはまだ“エース級”止まりの女の子もいる。

ホス狂いが待機室に集まればもちろん話題はホスト一択であるわけだが、稀に「ちょっと待って、アンタの担当ホスト、○○くんだよね?」と担当ホストが被る事態も発生し、その担当ホストも巻き込まれる形で修羅場に突入する。

Aで仲良くなったアユの別の友人は月に300万円を担当ホストに貢ぎ、売掛も2000万円あるという。頻繁に待機室で発狂していたものの、彼女はいまでも元気にAで働いているというが、額が額だけにそうはいかない子も当然出てくる。

担当ホストが働くビルで飛び降りたい

Aに所属していた二十歳のあるホス狂いが、担当ホストを水揚げ(店を辞めさせてホストを経済的に養うこと)した。しかしそのホス狂いは過去に2000万円近いシャンパンタワーを注文しており、1500万円が売掛になっていた。さらにほかの売掛も積み重なっており、手に負えない状況になっていた。

売掛が払えなければ担当ホストの責任になる。つまり2人は支払いをはねて駆け落ちしていたということになる。まもなくAにホストクラブの人間たちが押し入り、彼女は連れていかれてしまった。その3カ月後にそのホス狂いは東新宿のマンションで飛び降り自殺をした。

筆者撮影
ホスト客に声を掛ける無料案内所の男性

歌舞伎町には飛び降り自殺が多発しているビルがいくつかある。その代表格が第6トーアビルだ。屋上に上がれるビルか否かがポイントになるわけだが、第6トーアビル(現在、屋上は封鎖)のように、ホストクラブが複数入居しているビルで自殺は多発するとアユは言う。

「恋のもつれでも金でも自殺の原因は担当ホストへの気持ちの強さであることに変わりはないので、死ぬなら担当ホストが働いているビルでって考える子は多いです」

たしかにその場合、担当ホストはその女の子のことを一生忘れることはないだろう。