トラウマによる「内なる綱引き」

トラウマが襲ってくると、脳のあらゆる側面に影響し、それによって認知、計算、結論を変えてしまう。これも覚えておいてほしいが、このすべてが知らないうちに起こる。ひとつのことを考えていても、結論を下す段になると、表面下にある私たちの一部は、驚くような結論を示してくる。本当にやりたい仕事の面接に臨もうとしているときに「おまえには無理だ」と言ってきたり、不健全な人間関係から抜け出そうと決めたあとで、「とどまるべきだ、今度はうまくいくから」と言ってきたり、何カ月も何年も前にやめていた依存的習慣を考えていると「今回だけ」と言ってきたりする。

この内なる綱引きは、ほとんどの人になじみがあるだろう。混乱し、心が張り裂けそうになるかもしれない。一方には健康的な天使がいて、結論をよく考えて、自分のことを大事にしてほしいと思っている。反対側にいる悪魔は、あきらめるべきだ、チャレンジするな、気にするな、何も考えずに希望だけ持て、ベッドから出るな、などと自分が人生のよいものにふさわしくないと思わせることならなんでも言ってくる。

自分の中の葛藤を受け入れて声に出す

トラウマはこのような悪魔をどんどんつくり出し、力を与え、綱引きを落胆と苦痛と悲しみと恥でいっぱいの不釣り合いなものにしてしまう。そのあいだに、私たちはそのなかで引きずりまわされ、悪魔が私たちを泥沼に向かって引っぱっていく。

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このたとえにしっくり来て、自分が健康的な衝動と不健康な衝動のあいだの綱引きにとらわれてしまうことがあるのなら、次のことを試してほしい。試すときにはかならず意識的に行うこと。そのプロセスを表面に出し、自分のなかの葛藤を認識する。それがうまくいったら、両肩にいる天使と悪魔(あるいは、葛藤の性質によってどんなタイプのキャラクターを選んでもいい)を想像する。

この方法のいちばん重要なパートは、自分のなかにある意見の葛藤を受け入れて声に出すことだ。こうすると、自分の力を手放すことなく、その渦中にいる自分を想像することができる。それぞれが“引っぱってくるとき”の意見を聞き、意識的な方法でその価値を見極め、最終的に自分にとって最善のものを(選んでもらうのではなく)自分で選ぶ。