戦後の日本人に受けたワケ

程度の問題はあれ、それは、子役があまりに早熟に見えた場合の世間の典型的な反応でもある。子役に求められるのは“純粋無垢むくな子ども”であり、その枠から外れる面を子役が見せたとき、拒否反応とまではいかなくとも少なくとも世間は戸惑う。

それがその場だけのことで終わる場合もあれば、この美空ひばりのように激しいバッシングになることもある。

ただし美空ひばりの場合、知識層からは批判されたとしても、それをはるかに上回る大衆の圧倒的な支持があった(ジャーナリストの竹中労は、この大衆の側に拠って立つ視点からひばりを擁護した。『完本美空ひばり』を参照)。

太田省一『子役のテレビ史』(星海社新書)

そこにはやはり、敗戦直後という特異な状況があったと言える。敗戦で打ちひしがれ、一面の焼け野原という文字通りゼロの状態から出発したその時点の日本人は、ある意味大人でありながら“子ども”だった。

だから、そこにすい星のごとく現れた「歌う子役」美空ひばりは、大人の歌を鮮やかに歌うことで逆に大衆を魅了した。

戦後の復興は日本人がもう一度“大人”になろうとする過程であり、美空ひばりはその「子どもから大人」へのプロセスを凝縮して体現してくれる存在だった。そのなかで知識層の美空ひばりへの評価も、最終的に肯定的なものへと変化していくことになる。

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