「グアムキラー」の恐るべき実力

一方のアメリカは、この期間を通じて中東のテロリストとの戦いに明け暮れていた。最近ではNATOの東側の陣地を強化するために、ヨーロッパに部隊と武器を投入している。オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。

だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。

アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内(無給油の戦闘機がガス欠になる前に帰還できる最大飛行距離)にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。

この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる。

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さらに悪いことに、中国は現在、グアムを攻撃できる爆撃機と弾道ミサイルを保有しており、本土から1000マイル以上離れて移動中の空母を攻撃できる可能性もある。これらの「グアムキラー」と「空母キラー」のミサイルが宣伝通り機能すれば、中国は東アジアにおけるアメリカの軍事力に損害を与えることができる。

台湾の圧倒的に不利な状況

台湾には、その遅れを取り戻す準備ができていない。徴兵制からプロフェッショナルによる志願制への移行の一環として、台湾は現役兵力を27万5000人から17万5000人に削減し、徴兵期間を1年間から4カ月へと短縮した。新兵は数週間の基礎訓練しか受けず、予備役の訓練は頻度が少なく内容も不十分だ。

また、台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。

台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる。

要するに、中国は1914年のドイツや、1941年の日本のように、軍事面では有利だが有限のチャンスの窓を持っているということだ。台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ。