地域単位ではない選挙制度が必要だ

女性地方議員に市民型が多いことは示唆的である。女性を排除する政治構造のなかで、地方政治において女性たちは異なる政治スタイルを編み出し、異議申し立てを行ってきた。地方政治において展開された女性の政治参加は国政では政党の壁に阻まれている。

ここで重要になるのは、地域単位とは異なる利益を汲み取るような選挙制度を構想することである。地域単位の利益というのは、私たちの社会で政治的に表出され、行政の対応が求められる利益の一部でしかない。生活のなかで直面する様々な問題について、私たちが政治的な対応を求めたいと思う案件は様々である。安心・安全な社会を実現することは政治の最も根源的な役割であろう。

写真=iStock.com/Koshiro Kiyota
島根県松江市中心部 ※写真はイメージです

地方政治が男性優位のままではいけない

三浦まり『さらば、男性政治』(岩波新書)

しかしながら現在において、私たちが不安に思うことは、地域単位では語れないことが増えてきた。長時間労働の是正、安定した雇用、学費の値下げや奨学金の充実、医療保健体制の充実といった生活の安定に関わることや、ジェンダーに由来する生きづらさはどれも地域単位に落とし込めるものではない。地方政治の権力構造が「男性優位の無法地帯」で維持されている限り、こうした案件は埋もれ、政治的解決が遠のくことになる。

つまりは、地域政治が男性政治の基盤を成しており、男性政治を変えるということは、地域政治を変えることと不可分である。地域における女性の良質な雇用を増やしたり、地域社会における女性の発言権を高めたりする取り組みも不可欠だ。男女同権の町内会運営も必要である。

小選挙区などの地域単位の選挙区は、すでに出来上がっている地域の権力構造(=男性政治)を温存させる。比例代表の役割をもっと強めるといった改革を実施しなければ、男性政治を打破することは難しいだろう。

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