中国、インド、トルコが輸入を増やしている

現在、ロシア経済は想定されたほどには悪化していない。端的に言えば、踏みとどまっている。2022年4~6月期、ロシアの実質GDP成長率は前年同期比-4.1%、7~9月期は同-3.7%だった。2022年3月に全産業ベースのPMI=購買担当者景況感指数は40を下回ったものの、その後は景気の強弱の境目である50前後で推移している。

要因の一つとして中国、インド、トルコなどによるロシア産原油の購入(ロシアの輸出)増加は大きい。膨大なエネルギー需要を満たすために、価格の低いロシア産エネルギー資源の輸入を増やすことは中国やインドにとって重要だ。足許では、パキスタンもロシア産原油の購入を検討している。他方で、制裁などによってロシアの輸入は全体として減少した。そのため、想定されたほどロシア経済は悪化していない。

負の影響は昨年以上に増す恐れ

中長期的にロシア経済の悪化は避けられないだろう。要因の一つとして、長引くウクライナ紛争がロシアの社会心理に与える負の影響は次第に大きくなると考えられる。それによって個人消費などは一段と落ち込むだろう。

ウクライナ危機の発生以降、ロシアから脱出する富裕層やオリガルヒは増えた。2022年6月に英国防省は出国を目指す富裕層は1万5000人との推計を発表した。オリガルヒの多くはプーチン政権と関係を強化し、資源開発の権益などを手に入れたとみられる。彼らの国外脱出は国民に不安を与えたはずだ。

さらに、2022年9月、プーチン大統領は予備役の部分的な動員令の発動を宣言した。動員令に反発した人はデモを起こし、拘束される人も増えた。また、徴兵対象となる若者などの出国も増えた。一部報道では、ロシア国内で厭戦えんせんムードは高まり、戦闘の継続と和平交渉の実現をめぐって世論は二分されているようだ。