この事故で歩行者の女性1人が死亡、4人がけがを負い、97歳のドライバーは過失運転致死傷の罪で起訴。2月28日、福島地裁で初公判が開かれる予定です。

89歳、97歳……、いずれのドライバーも、これまで積み重ねてきた人生の終焉しゅうえんで、取り返しのつかない大事故を起こし、第三者の未来を奪ってしまいました。

「なぜ、事故を起こす前に、免許を返納しなかったのか?」

おそらく多くの人は、事故を起こした本人やその家族に批判の目を向けることでしょう。しかし、こうした超高齢のドライバーに「運転免許」を与えているのは誰なのか? という点について、冷静に見極めることも大切です。

80歳以上のドライバーはこの10年でほぼ倍増

とはいえ、決して「高齢者の運転だけが危ない」と言っているわけではありません。図表1は、警察庁がまとめた「原付以上運転者(第一当事者)の免許保有者10万人当たり交通事故件数(令和3年)」を表したグラフです。

出所=警察庁交通局「令和3年中の交通事故の発生状況

「第一当事者」とは、事故の過失が多い当事者(加害者)のことですが、これを見ると、10万人当たりの交通事故件数は、85歳以上で524.4件、16~19歳では1043.6件となっており、高齢者より若年層のほうが、圧倒的に事故件数が多いことがわかります。

しかし、高齢化が進むにつれ、免許保有者の高齢化も進み(図表2)、高齢者の事故件数も上昇傾向になっています。

図表3のグラフは、「75歳以上・80歳以上の運転免許保有者数の推移」を表したものです。その数は毎年右肩上がりで増えており、80歳以上の免許保有者は、平成21年には119万人でしたが、10年後の令和元年には229万人と、ほぼ倍増していることがわかります。

死亡事故件数は近年減少傾向が続いていますが、75歳以上の高齢運転者による死亡事故に限ると、件数と構成率が増えてきていることが分かります(図表4)。