子どもが協力してくれない残念なケースも散見される

ちなみに、賃貸物件の管理会社の対応もまちまちで、「名義人であるご主人が亡くなったのなら、ご指定いただいた別の口座に振り込みますね」と柔軟に対応してもらえるケースもあれば、「遺産分割協議書がなければ家賃を振り込めません」と頑なな対応を取るケースもあるようです。

島根猛『「もしも夫が亡くなったらどうしよう?」と思ったら読む本』(クロスメディア・パブリッシング)

「ご主人名義の銀行口座が凍結されてしまったら、生活費が引き出せなくなる」という話に戻れば、それはライフラインを断絶された状態に他なりません。残された奥さまは一刻も早く相続手続きを進め、銀行預金を引き出せるようにしなければなりませんが、この場合お子さんに当面の生活費を借りるケースもあるようです。

これは子どもと同居している、あるいは近くに住んでいれば協力してもらいやすいのですが、離れて暮らしている場合はそう簡単にはいかないものです。

子どもというのは「実家、あるいは親はある程度のお金を持っているもの」と思い込んでいるふしがあり、ご主人の死後に残された奥さまが生活費の援助をお願いしても、「お母さんにお金がないなんて知らなかった」「貸してと言われても、自分たちにだって生活があるんだから、困る」などと断られてしまう、残念なケースも散見されます。

当たり前の話ですが、人間はお金なしには生きていけません。「相続」というと「相続税の対策」が第一であるというイメージを持つ人が非常に多いのですが、ご主人を亡くされた奥さまが相続を考えるときには、もちろん相続税のことも大切ですが、それよりもまずは奥さま自身の生活資金のことを第一に考えていただきたいと思います。

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