全国トップクラスの分娩数

杉本理事長は、館山の個人産院を2005年に引継ぎました。これが、ファミール産院のスタートです。

その後、君津市からの要望で14年に2院目を出店。15年には千葉大学医学部前に「なのはなクリニック」を、17年に蘇我のクリニック(現ファミール産院ちば)を事業承継、20年には市川に出店。そして22年11月にJR津田沼近くに「ファミール産院つだぬま」を新規オープンしています。

分娩数の推移を見ると、同院の成長度合いがよく分かります。

これを全国の分娩数ランキングにあてはめてみると、ファミール産院の2132件は、20年時点の数字で全国7位というトップクラスの数字です。他施設は1カ所での展開というところも少なくないので単純比較はできませんが、全国的に分娩数が減少している中で、ファミール産院は複数店舗で多くの分娩をする産院として全国でも稀有の存在になり始めています。

出典=病院情報局 ランキングを基に筆者作成

コロナ禍でも出生率は上昇

これを全国の出生数、合計特殊出生率と比較すると同院の伸びがさらによく分かります。

全国の出生数は19年から減少し、20年からは新型コロナウイルスの影響もあり、さらに大きく減少し、21年には81万人、出生率1.30にまで減少しています。千葉県も21年までは出生数は減少しており、出生率は1.20と全国平均よりも低くなっています。

その中で、ファミール産院が最初の拠点とした館山市21年の出生数、出生率共に19年を上回り、君津市は出生数こそ減少したものの、出生率は100%を維持しています。これが、ファミール産院が出店すると出生率が上がると言われるゆえんです。

今後、この流れが千葉市、市川市、習志野市などにも広がっていけば、千葉県の出生率を底上げする……というのは言い過ぎでしょうか。

地方で成功しているワケ

ファミール産院は、決して商圏に恵まれた立地で産院を運営しているのではなく、出生率の低い千葉県で、さらに人口も出生数も少ないローカル都市に複数施設を展開し、医院経営を行っているのです。

効率だけ考えたら、人口の多い都心で1院だけを経営したほうがいいでしょう。なぜ同院は、わざわざ商圏的に恵まれない地域で産院を展開し、成功しているのか。

そこには、従来の産院の常識を覆す取り組みがありました。