嫌われているなら、あえてお願いごとをしてみる
そのまま敵対関係、緊張関係を続けるのも一つの手ですが、なるべく敵はつくらず、嫌われるのを避けたいというのが多くの人の本音のはずです。
私は自身の経験も踏まえ、大学院で心理的な側面から交渉学を学び、こうした人間関係の悩みを解決する最良な方法を見出しました。
その方法とは、嫌ってきたり、敵視したりしてきている相手にあえてお願いごとをするというアクションです。
「そんな人にお願いごとなんて聞いてもらえないよ!」と心配になるかもしれませんが、安心してください。頼りにされて嫌な気持ちになる人はいません。なぜなら、人は誰かに頼りにされることで、他者から認められたいという「承認欲求」が満たされるからです。
承認欲求は、人間の本能に直結したとても強い欲求なので、人はそれを満たしてくれる相手を重要視します。その結果、お願いごとをくり返すうち次第にこちらに対して好意や親近感を感じはじめ、いつの間にか相手を味方に引き込むことができるのです。
「頼まれたらすぐにできる」くらいがコツ
ポイントは丁寧にお願いすること。相手を尊重し、お願いすることです。私も予備校講師時代、自分を疎んじていると聞いていた上司に「もっと売れたいと思っているのですが、ご迷惑でなければ○○さんが今のポジションまでいくまでに工夫したことや苦労したことを教えてもらえませんか?」と頼ってみたところ、効果てきめんでした。それをきっかけにその人とは1対1でゴハンに行く仲になり、私が会社を退職した今でもその人との関係性は続いています。
自分を敵視しているであろう上司にするお願いごとは、「お薦めのパソコンを教えてほしい」「苦労話を聞かせてほしい」など、些細なことで十分。頼まれてすぐにできるから関係改善のきっかけになるのです。逆にヘビーなお願いごとは、相手からよりいっそう嫌われてしまう可能性があるので注意しましょう。このように、自分を敵視する人にあえてお願いごとや頼みごとをすることで、友好関係を築けるようになることを「ベンジャミン・フランクリン効果」といいます。
これはアメリカの政治家ベンジャミン・フランクリンのエピソードに由来しています。彼を目の敵にする人物があるジャンルの本のコレクターと知り、ベンジャミン・フランクリンはコレクションを貸してくれるように依頼。相手は喜んで応じ、以後、友好関係を深めていったのです。