厳かに執り行われた通夜法要

厳粛な雰囲気の中で、通夜法要が執り行われていきます。あまりの参列者の多さに、スタッフが焼香の案内を焦りはじめているのを感じましたが、すべてはおごそかに終わりを迎えました。

安部由美子『もしも今日、あなたの大切な人が亡くなったとしたら』(青春出版社)

ご参列の皆さまにお礼を述べ、明日、何かしらでがんばってくださる例の皆さまにあいさつをし、最後にご遺族のところへ行って、通夜である今晩はなるべく眠る努力をするようにお願いをしてから、自分の車に向かいました。

駐車場に着いた私が、夜空があまりにきれいなので見上げていると、後ろから美花さまがいらっしゃって、明日の気がかりや、ドキドキする胸の内を伝えてこられました。お葬式は、家族の最後のセレモニー、二度はない大切なお見送りです。ドキドキするのは当然でしょう。お気持ちは十分に理解できるので、「明日は私が早めにここに来て、美花さまに安心していただけるようにします」と約束すると、ホッと安心されたような表情を浮かべ、手を振って私を見送られました。

いよいよ「秘密作戦」決行の日

翌朝、斎場に向かう道すがら、車窓から見上げた空は美しく晴れ渡っていました。澄んださわやかな風が車の窓から入ってきます。その風の香りは、私に本格的な春の到来を知らせてくれていました。

自宅から2時間近く走ったところにある斎場の駐車場に、普段よりかなり早く到着しました。そうです。美花さまと約束をしていたからです。

美花さまは、駐車場で待っていました。あいさつを終えると、「昨晩は興奮してよく眠れませんでした」と言います。「あらら。今日は大役ですよ、大丈夫ですか?」。そう尋ねると、「その点はこれまで培ってきたものがありますし、何より若さがありますのでお任せください」と言って力こぶを見せる仕草をしたので、二人して笑ってしまいました。

安心したところで控え室に行き、ご遺族と弔電の確認や喪主あいさつなどの打ち合わせを終えました。

その一方で、昨日の例の皆さまと秘密作戦を決行しなければなりません。打ち合わせの最終確認です。皆さまに声をかけて、別室に集合してもらいました。