「じゃ、社内には設備を何も置かないんですか」と真央ちゃん。
「うん。普通のクラウドはインターネット上のサービスをみんなで共有するのでね。でも、自社だけが使うシステムにしたいというニーズに応えて、社内に専用の設備を置く方式もあるんです。それで最近は従来型のクラウドをパブリッククラウドっていって、社内に設備を置くのはプライベートクラウドっていうそうです」
プライベートクラウド/企業などが社内にクラウドコンピューティングの設備を置き、自社専用に利用するクラウドサービス。遊び場を各家庭で所有するのは非効率だから公園があるわけだが、混み合っていたり防犯が気になったりするという理由で自宅に公園を作り、それをプライベート公園と呼ぶような言葉の矛盾がある。
部長は怪訝な顔だ。「あん?発電所はいらないからって外に出したのに、一周してまた社内に戻ってきちゃったじゃないか」。
「とっ、とにかく、クラウドサービスも上手に使えば、ビジネスツールになりますよ」藤井君がほっとした顔で言う。
「じゃあ、ソフトがなくてもなんとかなりそうだね。家に帰ったらやってみるよ。部長、月曜の商談資料は、お任せください」
会社帰り、小松原君と一緒に歩いていると、取引先のK課長と駅でばったり。立ち話中に藤井君が携帯を取り出し、「ええ、ええ、なるほど」などと上の空の相づちを打ちながらツイッターで「新宿駅なう。苦手なK課長に遭遇」などと打ち込んでいると、「藤井さん、あなた、打ち合わせのときもそうだけど、私と話しているのか、携帯と話しているのか、どちらかにして。気になって仕方ないよ」と怒られてしまった。
ツイッターは今やっていること、思っていることを書くメディアだから、どうしても「ながら」利用が多くなりがちだ。しかし、目の前の人とコミュニケーションしながら、ネットでも裏コミュニケーションをするという二重会話は、藤井君のように本来の会話中に空白の時間ができ、実に印象が悪い。
※すべて雑誌掲載当時