ロシアへの「屈辱的な扱い」に拍車

それで、ひとつの方法として、橋爪さんはいま新国連という斬新なアイデアを出されました。これは、おもしろいとは思いますけど、おそらくいろんな意味でむずかしい面があります。

橋爪大三郎、大澤真幸『おどろきのウクライナ』(集英社新書)

ロシアはずっと、(少なくとも主観的には)自分がひどい屈辱的な扱いを受けていることに対して、非常な怒りを感じていますね。だから、もし新国連をつくって、お前は仲間外れだということになれば、もっとひどい屈辱を与えることになります。G7プラスどころじゃない、プラスにも入らないぞ、と。

それだけじゃなくてもっと重要なのは、新国連がつくられたとして、ロシア以外のほとんどの国が喜んでそちらに加入するだろうか、ということがあります。軍事侵攻が始まって一週間ほど経過したとき、国連総会でロシアに対して非難決議をしましたが、けっこう反対する国がありました。非難決議に積極的に賛成しない国が、40カ国あるわけです。

【橋爪】棄権のことですね、反対じゃなくて。

ロシア非難に同調しない国がずいぶんある

【大澤】そうです、棄権です。はっきり反対票を投じたのは、ロシア自身を含めて5カ国だけですが、はっきりと賛成しなかった国はかなりある。

今回の軍事行動に関していえば、ぼくらから見れば、ほぼ100%に近いぐらいウクライナや西側のほうに理があるはずです。そんなときでさえも、積極的には同調しない国がずいぶんあるのです。

そうすると、別の国連─EUみたいにローカルなコミュニティをつくるのならともかく、完全にグローバルで包括的な国際組織を、いままでの国連の外に、しかも国連に匹敵するものとしてつくり、みんなで移るというようなやり方はたぶんむずかしいでしょう。というか、それができるぐらいの状況だったら、問題はもう解決している段階になるんじゃないか、という感じがします。

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