主要5方面で唯一ゼロだった車内トイレも

もうひとつの大きな変化はトイレだ。JR東日本が「中央線は、主要5方面(東海道、横須賀・総武快速、高崎・宇都宮、常磐、中央)で唯一車内トイレが導入されていませんでした。車内トイレを設置することにより、中央線を利用されるお客さまへのサービス向上につながることから、普通車及びグリーン車に車内トイレを設置することとしました」と説明するように、グリーン車4号車に通常トイレ、普通車6号車に車椅子対応バリアフリートイレを設置する。

普通車にもトイレを設置することについて同社は「グリーン車を利用されるお客さまに限らず、車いす対応トイレを利用できるように、普通車のうち、グリーン車に隣接する予定の車両に車椅子対応トイレを設置することとしました」と説明する。

なるほど、確かにグリーン車だけにトイレを設置すると、トイレを利用するためにグリーン車に立ち入る旅客が出てくる問題や、グリーン車以外を利用する旅客から不満が出る恐れがある。多額の費用はかかるものの、事業者にとっても利用者にとっても悪い話ではない。

グリーン車を入れるならトイレも増やさないといけない

だが、JR東日本が言及しないもうひとつの問題もありそうだ。2006年に制定されたバリアフリー法の基準を定める省令は、第32条第5項に「便所を設ける場合は、そのうち一列車ごとに一以上は、車椅子使用者の円滑な利用に適した構造のものでなければならない」としている。

しかしグリーン車のトイレは通路の脇にある小さなもので車椅子に対応していない。つまりトイレが付いたグリーン車を連結することで、車椅子に対応したバリアフリートイレを別に設置しなければならなくなるというわけだ。

前述の他5路線では10両編成の1号車と10号車の2カ所にトイレを設置している。4・5号車グリーン車は通り抜けできないため、サービス向上だけが目的であれば中央線でも1号車と10号車にトイレを設置する選択肢もあったはずだが、6号車だけの設置としたことに、別の理由があったことをうかがわせる。

混雑で有名な中央線利用者からすれば、追加料金で座れるグリーン車の設置は(たとえ日常的に使わないとしても)歓迎だろう。ところが計画発表から7年が経過する中で大きな環境の変化が生じてしまった。新型コロナである。