「ズルい」という感情が生んだ「ノルマ」

なぜ、そんなことになったのか。おそらく家に取り残された母親たちの、働く母親たちに対する複雑な感情も要因だったろう。「自分は専業主婦だから、PTAを断れない」と思い詰め、役員を引き受けた母親たちが抱いた、やるせない思い。人は誰でも、自分が我慢したことを我慢しない人(特に同じ属性の)をみると腹が立ち、「ズルい」と言って攻撃したくなる。

彼女たちも本当は、外に出て働きたい気持ちがあっただろう。でもそれはあきらめざるを得なかったから、PTAやベルマークの活動を休んで仕事にいく母親たちを「ズルい」と感じ、「必ずやれ」と縛りを強化していった、そんな面も大きかったはずだ。

あえて書かずにきたが、筆者も取材のなかで、あるいは自身のPTA体験のなかで、いわゆる「専業主婦とワーママの対立」を幾度となく見てきた。フリーランスながらフルタイムで働いてきたので、ワーママたちの気持ちもよくわかるのだが、一方で妊娠により退職せざるを得なかった経験もあるので、一部の専業主婦の人たちが抱く鬱屈も共感できるところがあった。

かつて母親たちにもてはやされたベルマーク活動は、こんなふうにして罰則のような「ノルマ」と化し、多くの母親たちから嫌われる存在になっていったものと思う。

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これからのベルマーク活動

では、PTAのベルマーク活動は、これからどうするべきなのか。

「やりたい人だけ」で続けるというのも、一つの考え方だろう。今は忙しい世帯が多いが、「保護者同士で交流したい」というニーズが全くなくなったわけではない。仕事の有無にかかわらず、なんとか時間を捻出してでも活動に関わりたい、保護者同士で話をしたい人はいる。やりたくない人を無理に巻き込みさえしなければ、それはそれでいいはずだ。

あるいはもう、PTAに求められる役割がかつてとは違うことを前提に、ベルマーク活動をやめるのもアリだろう。

コーラスにせよママさんバレーにせよベルマークにせよ、「やりたい人がいる」活動を何でもかんでもPTAでやる必要はない。全部やっていたらとてもキリがなく、パンクしてしまう。いまはベルマーク活動が始まった六十数年前と異なり、NPOなど自主的な活動を立ち上げることも容易い。学校を超え、保護者同士の交流の場を設けて、そこでベルマーク活動をしたっていいだろう。