たった半年で偏差値30台から70へ急伸した女子の勉強法
先生が教えた生徒の中には、びっくりするほど急に成績を伸ばす子が、毎年何人かいる。その中の1人である女子生徒は、たった半年で偏差値30台から70まで実力を上げた。
彼女は現役時代はバンド活動に没頭して勉強しなかった。しかし予備校に入ると、黒板だけでなく授業を一字一句書き留めようと、熱心にノートをとっていた。ときに先生を睨みつけるようにしながらも、手を休めることがなかった。
どうしてそんなにノートをとるのかと聞くと、「家に帰って先生の話を再現する。自分で語って考えを理解し納得するためです」と答えた。こんな真剣な学習方法で、身につかないはずはない。
このエピソードで私が一番感心したのは、彼女のノートをとる力だ。私は若い頃から仕事で人に話を聞き、苦労しながら取材メモをとってきた。だから言えるのだが、あとで役立つノートをとるのは、たやすいことではない。それには言葉の理解力や記述力が必要だ。彼女には、そもそも言葉の基礎的な力が備わっていたのだろう。
では読解力、記述力はどこから生まれるのか?
以前、霜先生は大学に入ったばかりの学生たちに、語彙力のテストを行った。高偏差値の大学生ほどボキャブラリーが豊富だろう、と予測していた。結果は、その予測をはるかに上回る大きな差となってあらわれた。
「東大生が他の一流大学の学生より、驚くほど語彙力があったのです。これは文理同様の結果でした」
語彙力と成績とは、想像以上に強く結びついていたのだ。
霜先生が読書として推奨するのは小説だ。読むうえで想像力を必要として、それがゆえに、熱中できるのが小説である。小説が苦手という生徒には、こう話すという。
「人は人生という自分の小説を書きながら生きている」
いい言葉だ。確かに人は、心の中で自分だけの人生の小説を書き続けている。その意味で、小説はもっとも身近な文なのだ。
小学生が語彙力をつけるには、小説を読むのがいい、と私も思う。辞書をひいて言葉を暗記するだけでは、身につかず忘れてしまうことも多い。反対に、文章に心が動かされたとき、その中心にある言葉は記憶に残る。言葉は単独で生きているものではなく、物語の文脈の中で力を発揮するように仕組まれている。
だから、心を動かされる小説を読むことは、語彙力をつけるのに一番いいといえるのだ。