棺の上には王冠、王杖、宝珠の「三種の神器」が
女王の棺の上には英王室の「三種の神器」が置かれていた。日本人にとって「三種の神器」は絶対に目にできないものとされている。一方、英国では王冠(インペリアル・ステート・クラウン)は普段でも世界遺産になっている要塞「ロンドン塔」に行けば見られるのだが、防弾ガラスに囲まれ、観覧の際は動く歩道に乗るので立ち止まれず、じっくり肉眼で見るチャンスはそうそうない。
M子さんは「沿道で霊柩車を待ったのですが、あのダイヤモンドがザクザク付いた王冠を肉眼で見られて感動しました」と語る。
ちなみに三種の神器は英語でレガリア(regalia)という。欧州には何セットかが過去の王室の歴史を物語るものとして保存されているが、そもそも王室が現存する国自体少ないため、映像越しであっても「現在有効なレガリアのセット」が出てくる機会は非常に希少だ。
棺の上に掛けられた「カラフルな布」の意味
女王の棺には、カラフルな旗が掛かっていた。よく知られる国旗・ユニオンジャックではないことに「あれは一体何?」と疑問に思った人も少なくなかったのではないか。
あの旗は「ロイヤルスタンダード」と呼ばれ、英国を構成する“4カ国”の”国章”がモチーフとして描かれている。英国の正式名称はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)とあるが、この「連合」を成すのはイングランド、スコットランドとウェールズの“3カ国”だ。
ロイヤルスタンダードは英国王が所在する現在地に掲げられる。したがって、女王がバッキンガム宮殿に居る際は大きな「ロイヤルスタンダード」が建物に掲げられるが、不在の際はユニオンジャックに切り替わる。この習慣はすでにチャールズ3世新国王にも引き継がれ、例えば棺の葬送の際にも、国王乗車中の公用車に「ロイヤルスタンダード」が取り付けられていた。