試乗用モデルを自腹で購入、妻に怒られる
さて、半年後にしまなみ海道を走ると約束した中村。ロードバイクを持っておらず、長距離ツアーも未経験だった。これから準備しなければならないけれども、どこから始めようか……。
そうこうしているうちにジャイアント本社から県庁に1台の試乗用ロードバイクが届いた。受取人は知事本人。そこには「これに乗って準備してほしい」というメッセージが込められていた。
確かに中村はロードバイクを必要としていた。とはいっても、試乗用に乗り続けるわけにはいかなかった。ジャイアントへ返品しなければ知事個人が寄付を受けた格好になってしまう。
そこでジャイアント側には「私に乗ってほしいのならば請求書を送ってください」と連絡を入れた。試乗用がカーボンフレーム製の高級モデル「ディファイアドバンスド2」であるとは知らずに、である。
しばらくして請求書が届いた。中村は値段――30万円以上――を見て驚いた。ロードバイクとはこんなに高いものなのか! 自腹だから妻に相談しなければならなかった。「国際問題になるからとにかく払ってくれと言ったら、怒られましたね」
ちなみに、中村は10年以上経過した今も古い「試乗用」に乗り、サイクリングに精を出している。毎年部品を取り換えてバージョンアップを繰り返しているうちに、ますます「試乗用」に愛着を感じている。
1社のイベントから国際的な官民連携プロジェクトへ格上げ
しまなみ海道ツアー「日台交流・瀬戸内しまなみ海道サイクリング」は2012年5月10~15日に決まった。
もともとはジャイアントの社内プロジェクトであったのに、いつの間にか国際的な官民連携プロジェクトへ格上げされていた。開催場所が北海道からしまなみ海道へ変更されただけではなかったのだ。知事とジャイアント会長の心が通い合った結果、大規模なイベントに様変わりしたといえる。
裏方の存在も忘れてはならない。ジャイアントジャパン所属のプロライダーである門田基志が愛媛在住で、彼のサイクリング仲間には県職員も含まれた。そんなことから、知事とジャイアント会長とは別ルートで双方の裏方がしっかりつながり、しまなみ海道ツアー実現に向けて奔走した。