「円キャリー」が起こる可能性が高まっている

前回の本連載でも指摘しましたが、「円キャリー」取り引きが起こる可能性が高まっていると私は考えています。「円キャリー」とは、金利の安い円を借りて、それを即座に金利の高いドルに換え、金利差による運用益を得ようとする取引です。

前回の復習になりますが、4%以上の金利差ができると円キャリーが起こりやすくなると言われています。それより金利差が小さいとキャリー取り引きが起こりにくいのは、為替リスクがあるからです。

日本の金利はゼロです。米国の政策金利(短期金利)の誘導ゾーンは現状2.25%から2.5%です。もし、9月のFRBのFOMCで、大方の予想通り0.75%の利上げがあると、誘導ゾーンは3.0%から3.25%に上昇するので、日米金利差は3%程度となります。

年内には、11月と12月にあと2回のFOMCがあり、そこで0.5%ずつ金利を上げたとしたら日米金利差は4%を超えます。そうなると円キャリーが起こる可能性が高いのです。キャリーが起こるとさらに円が売られますから、円安に振れやすくなります。

写真=iStock.com/PashaIgnatov
※写真はイメージです

逆に、この先、米国の住宅価格が下落に転じる、あるいは、労働市場が少し緩むなど、ある程度景気が抑えられる指標が出れば、予想されるような利上げは行われず、円キャリーも起こらず、円安も少し落ち着く可能性があります。

この場合、金利上昇による米国景気の減退懸念は和らぎますが、景気自体が弱含むわけですから、株式市場はかなり微妙な動きをする可能性があります。

日本は「ファンダメンタルズ」も問題

ここまでは短期的な話をしてきましたが、長期的にも考えなければならないことがあります。日本では現状29%程度の高齢化率が今後さらに上がり、ピークでは40%に達すると予想されています。少子化も進んでおり、人口減少が始まっています。財政赤字も対名目GDP比で先進国中最悪です。

今後も社会保障費は増え、財政赤字もこのままでは増加の一途です。そして、GDPもここ30年間ほど成長していません。経済の「ファンダメンタルズ」(基礎力)が弱いのです。この先もさらにファンダメンタルズが弱くなる可能性は高いと言えます。その点にも注意が必要です。

もう40年ほど前に、私が東京銀行(現三菱UFJ銀行)で駆け出しのディーラーをしていたころは1ドル=240円程度でした。為替レートは長期的にはその国の実力を反映します。日本がそこまで売られないことを願うばかりです。

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