体重減少には低脂肪食よりも低炭水化物食が有効

炭水化物―インスリンモデルでは、インスリンの分泌を抑えるために炭水化物をとりすぎないことが肥満の防止になり、同時に空腹の時間を減らすことにもなると考えます。一方で、たんぱく質や脂質はインスリンの分泌には無関係なので、糖質を制限する代わりに十分なたんぱく質と脂質を摂ることができます。

この炭水化物―インスリンモデルは、まだ仮説の段階で、この仮説に否定的な専門家も一部います。でも、私自身は従来のエネルギーバランスモデルよりも、非常に合理的な納得のいく考えだと感じています。実際、マウスの研究では、カロリーを一定に制限しても、炭水化物の摂取量を増やせば増やすほど、脂肪がついて太ることがわかっています。

浅野拓『健康寿命を延ばす「選択」』(KADOKAWA)

では、人を対象にした研究ではどうかというと、やっぱり同じような結果が出ているのです。53件の研究結果を取りまとめ、約6万8000人を対象に分析したある研究(メタアナリシスです)では、低脂肪食よりも低炭水化物食のほうが有意に大きな体重減少をもたらしたこと、低脂肪食は通常の食事に比べると大きな体重減少をもたらしたことを明らかにしています。つまり、体重減少効果は、①低炭水化物、②低脂肪食、③普通の食事の順番だったのです(*2)

肥満は、見た目の問題だけではなく、健康寿命を短くします。そう考えると、食後高血糖を起こしにくい体質の人でも、やっぱりインスリンを出しすぎる生活は避けたほうが良く、炭水化物(糖質)との付き合い方を選ぶ必要があります。

(*2)Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 Dec;3(12):968-79.

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