イトーヨーカドーの強みは「品揃えの幅」

【田中】成功事例になっているたまプラーザ店ですが、上手くいった秘訣はどのように分析していますか?

【山本】たまプラーザ店は過去に一度改装をしたことがあります。そのときは利益が出ている売り場だけを残した結果、客足が大きく落ちてメインの食品の売り上げも下がってしまいました。お客さまからは「私はこういう商品が欲しかったけど、なくなったのでもうイトーヨーカドーには行きません」といった厳しい声をいただきました。

もう一度私たちの存在意義を考えたとき、イトーヨーカドーの強みは一通り品揃えの幅があること、1カ所でいろいろな商品が買えることだと感じました。そこで、今まで切り捨てていたものをもう一度戻してみることにしました。ただし、改装で売り場面積を半分にしたので、従来の商品をそのまま戻すことはできません。

半分の売り場面積でも商品の見せ方を工夫する

そこで、今までのような婦人服・紳士服という括りではなく、生活のシーンごと、例えば家でくつろぐシーンとか、調理するシーンに合わせて売り場を編集したのです。さらに品揃えの幅を持たせるために、什器を高くしたり壁面を活用することで、半分の売り場面積でもより充実して見せられるようにしました。それまでは壁面がテナントで、真ん中が私たちの売り場だったのですが、壁面も使うことで面ではなく空間で売り場を見せることに成功しました。

これにより、お客さまから「良い意味でイトーヨーカドーらしくない」というお声をいただき、再び足を運んでいただけるようになり、結果的に食品の売り上げも伸びて館全体をお客さまがまわるようになったんです。私たちの存在意義に改めて気づかされたと同時に、売り場を工夫することでまだまだお客さまに対してサービスを提供できることに気がつきました。

【田中】単に縮小したライフスタイル部門を元に戻すのではなくて、生活シーン別の売り場にして、店舗の使い方を工夫することで、以前よりも魅力的な売り場に強化されたということですね。

【山本】はい、今は売り場の編集、見せ方、販促方法を工夫して、お客さまに価値がある商品を認知していただけるよう務めています。ただ、これからはもう少し若年層の方にも来ていただけるような品揃えと商品自体の改革が必要だと思っています。

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