技術力よりも、どれだけ働いているかのほうが大事

目利き委員会の具体例を挙げると、ある会社に対して、他の委員は、「いや、この会社はAランクと違いますよ」と散々反対したけれど、私は「いや、あれはAだ。あれをBとかCにするんだったら、私は委員を辞める」と、ゴリ押ししたことがあります。

その会社のその後はといえば、案の定、売上500億円くらいまで一気に成長していきました。なぜ、私がAランクにしたかといえば、彼らが恐ろしいくらい働いていたからです。睡眠時間を最小限にするだけでなく、風呂に入る時間も惜しんで働いていると聞いたから、Aランクにしたのです。10分や15分の審査時間では、技術の話を聞くよりも、そうした勘所を押さえたほうが、よほど正しい評価ができると私は思っています。

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▼まとめ

成長する企業を見極める最も基本的な方法は、経営者と社員の働き方を見ること。そこに評価の勘所がある。

トップの器以上には組織は大きくならないから、経営者は自分自身の器を大きくし、あわせて社員の器も大きくしていかなくてはならない。

「ジョブローテーション」に向かない人もいる

本来「人事」は、個別具体的なことであって、人によって対応を変えるべきものです。

たとえば、ある能力を有していることによって大成功する可能性がある人に対しては、ジョブローテーションだからといって、ぐるぐる部署を回さないほうがいい。それでは人事の失敗となってしまうでしょう。

日本電産グループの中にも、かつては、何の脈絡もなく、開発の人を営業にもっていったり、工場にもっていったりと、ぐるぐると人を入れ替える会社がありました。しかし、それでは本当のプロは育ちません。たとえ部署を変えるとしても、軸を変えてはいけないというのが私の考え方です。当該人物が「エンジニア」だとすれば、エンジニアを軸に少し違う島に異動させることはあっても、軸がまったく違うところに異動させてはならないということです。

そして本人に対しても、「君は技術者だ。わかっているな? それでも、今からもっと高い地位に就こうと思うなら、一度2年くらいは工場を経験してほしい」というように、こちらの意図を伝えるのです。実際、日本電産では、開発センターの所長になるような人は、必ず一度は工場を経験しています。

これは当たり前のことであって、設計を担当した人が、自分が引いた図面がその後どうやってつくられるかを知らないでは済まされないということです。だから、たとえ開発部長をやっていたとしても、一度は工場に出て工場長をやって、今度は開発センターの所長として帰ってくる。そうすれば、両方がわかるようになります。

営業をやってきた人を購買に回すのもいいでしょう。売る立場の人というのは、買う立場の人にいつもいじめられているわけですが、今度は逆の立場、すなわち買う立場になることで見えてくるものがあるということです。