「冬」「朝」とシーンを限定すると売り上げに響かないのか
雪見だいふくは「冬にもアイス」という新たな市場を開拓したため、「冬」のイメージが強い商品です。
88年発売のサッポロビール「冬物語」や、97年発売のグリコ「朝食りんごヨーグルト」も、飲食シーンを具体化した点は共通でしょう。これらは当初、「なぜ冬や朝(朝食)と銘打つんだ?」「夏やお昼に、売れないじゃないか」などと揶揄されました。
ところが両者とも、いまや代表的なロングセラーブランドに成長しています。
近年、マーケティングで「エボークトセット(想起集合)」という言葉をよく耳にします。
「アイスを食べよう」や「ビールを飲もう」と考えた際に想起するブランドの集合体で、早稲田大学の恩藏直人理事らの研究では、消費者が「アイス」や「ビール」という1つのカテゴリーでイメージするブランドは、2個以下しかないことが分かっています。
ところが、カテゴリーに別の視点が加われば、必ずしも全体の上位2位までに入らなくてもいい。まさに、その視点の1つが「冬」や「朝」といったシーンの提示でしょう。
今では春夏の売り上げが全体の4割を占める
シーンは、後から広げることも可能です。たとえば、朝食りんごヨーグルトは、17年の4月に「夜食りんごヨーグルトを発売する」というウソ(エープリルフールネタ)を発表。翌18年4月に、パッケージの「朝」の文字が、(特殊インク効果で)暗闇で「夜」に変わる商品を限定発売しました。これが「夜食でもイケるらしい」などと口コミを呼び、「夜にも」との新たなイメージを付加したのです。
雪見だいふくも18年以降は、秋冬だけでなく“通年”で味わえる商品になりました。22年7月現在、春夏の売り上げが全体の4割を占めるとのこと。ただそれは、他に先駆けて「冬にもアイス」の市場を開拓したからこそでしょう。
シーンを具体化するのは勇気が要ります。ですが、いち早くそこに踏み出したブランドこそが、長年多くの人に想起され、愛されるブランドになり得るのではないでしょうか。