脱原発を掲げていたドイツ・ベルギーの変化

「原子力依存型」モデルに問題があることは明らかであるが、だからといって、原子力発電をただちにやめろという意見に与することはできない。資源小国である日本にとって、再生エネから原子力まで、すべてのエネルギー源は大切であり、選択肢を減らすことは得策ではないからである。

ロシアのウクライナ侵攻は世界的なエネルギー危機に拍車をかけたが、そのような状況下で欧州や日本では、原子力発電の「活用」によって危機を乗り切ろうとする動きが強まっている。

ロシアからの天然ガス供給に大きく依存するドイツ(2020年の対ロシア依存度43%)では、なんとあの緑の党に属するロベルト・ハーベック経済・気候保護大臣が、2022年の原子力発電停止、2030年の石炭火力停止を、それぞれ先延ばしすることを検討すると、いったん表明する事態となった。結局、炉型の特殊性による資材調達難や残された出力の小ささから原発停止延期は撤回されたが、石炭火力の停止延期は可能性を残している。

ドイツとともに、グリーン投資の対象を選定する欧州タクソノミーに原子力を含めることに強く反対してきたベルギーも、2025年に予定していた原子力発電の全廃を、10年間延長することを決めた。

国内で早期に再稼働できる原発は4基のみ

日本でも、逼迫する電力需給を緩和するため、原子力発電所を早く再稼働すべきだという声をよく聞く。理屈上は成り立つ議論であるが、ここで直視しなければならないのは現実だ。そもそも原子力は速効性を有する柔軟な電源ではないのであり、じつは、需給逼迫が深刻化するとの見通しがある今年の7~8月だけでなく、2023年1~2月にも、原発再稼働は間に合わないのである。

ウクライナ危機が発生したからといって、日本の原子力規制委員会が規制基準の運用を緩めるはずがない。したがって、再稼働が想定できるのは、すでに規制委員会の許可がおりながら再稼働にいたっていない7基の原子炉ということになる。

これらのうち東京電力・柏崎刈羽6・7号機は、東京電力の不祥事によって、規制委員会の許可自体が事実上「凍結」された状態にある。日本原子力発電・東海第二は、運転差し止めを命じる水戸地裁判決が出ている(原電側と原告側がそれぞれ控訴)。

したがって、早期に再稼働する可能性があるのは、残りの4基、つまり東北電力・女川2号機、関西電力・高浜1・2号機、および中国電力・島根2号機に絞られる。