自分で片付けられる人を育てよう

最初は友だちにお願いして、お客さまを紹介してもらうなど、手探りでスタート。なぜか西崎さんの再婚が話題になって婚活セミナーの講師を依頼されることもあり、自分にできることは何でも引き受けた。片付けの仕事は少しずつ広がり、リピーターも増えていく。だが家全体の片付けは肉体労働なので、一人で回していくのは無理があると感じ始めた。

撮影=市来朋久

「おうちの片付けを全部私がやったら確かにきれいになるけれど、お客さま自身は片付けられる人になるわけではない。これからの長い人生を考えたとき、本人が片付けを身につけるチャンスも奪っているのではと気づきました。ならば自ら学ぶことで、自分で片付けられる人を育てようとシフトしたのです」

当初はマンツーマンで、西崎さんの自宅へ招いて学んでもらう形で始めた。お客さまの家で撮った写真と見比べながら、片付けのポイントを教えて宿題を出す。1週間後までに自分で取り組んでもらい、その後、西崎さんが手伝いに行くというやり方だ。

お客さまの中には「片付いていない家を見られたくない」という人もいるので、反応は良かったが、マンツーマン方式も難しいことがわかってくる。宿題を出しても「まだ終わっていないので1週間ずらしていいですか」と予定を変更されることが何度か続いた。マンツーマンでは気兼ねなくリスケできて緊張感が保てないことから、一対多という講座形式のセミナーに変えてみた。

45日間のセミナーは家中の写真を撮ることから始まる

仲間がいることで予定を変えづらくなり、日常生活の中で「片付け」の優先順位が上がる。互いに情報を共有しながら、「あの人もがんばっているから、私も……」と励みになる。西崎さんは心理面もサポートしながら、目標達成のコーチングを生かしたスタイルを築く。それが「家庭力アッププロジェクト®」だ。

セミナーで登壇する西崎さん。(写真提供=Homeport)

単に「片付け」のノウハウだけが身につく講座ではなく、「家庭力」アップとはどのような学びがあるのだろう。

セミナーは45日間で1クールとなる。まず片付ける前には、家中の写真を全部撮ることで現状を把握してもらう。課題図書としてビジネス書でベストセラーになった『7つの習慣』を読んで、自分自身が習慣にしていたことを理解してもらう。例えば、人のせいにしていた、自分が主体的ではなかったと気づくと、改善すべきポイントが見えてくるからだ。さらに西崎さんが参加者に問いかけることがある。

「そもそも、あなたは何のために家を片付けたいのかということ。皆、それぞれ理由があるのです。子どもの友だちを呼べるようにしたい、育休から復帰したときに家事に追われたくない、家族のイライラがない家にしたいとか。どんな暮らしをしたいかということを引き出して、自分の言葉で明確なゴールを描いてもらうようにしました」