「どうか子どもたちを気にかけてください」

代表委員会が開かれる前に、PTA会長はA校長から「事前の打ち合わせ」を頼まれた。

「私が改めて『いま、いじめで亡くなったという噂がどんどん広がっているので、そのことについてきちんと伝えてほしい』と言いました。すると、校長先生は『あなたから質問をもらう形でなら話す』と言ってくださいました。でも、この時も細かいオーダーが入って、『いじめで亡くなったのは本当ですか?』と聞こうとしたら、『いじめで亡くなったとは言わないでください。いじめと亡くなった理由は別なので、いじめがあったのは本当ですか? と聞いてください』と言われて、そのように言いました」(PTA会長)

代表委員会では、このような流れで質問が出て、A校長が「あったけれども、9月に解決している」と回答。山根夫妻は、それを同じ教室の一番後ろの席で聞いていた。

代表委員会が終わって、山根夫妻が保護者に向けて話をしようと立ち上がると、A校長は席を立ち、そのまま教室を出ていってしまった。山根夫妻は驚いたが、A校長以外は教室に残っていたので、父の達彦さん(仮名)があいさつをした。

「山根詩織の両親です。娘は昨年の暮れに、いじめを書きつづった遺書を残して、自殺をしました。恥ずかしいけれども、私たちは何も、知りませんでした。皆さんの身近なところで、いろいろなことが起きています。うちはもう手遅れで、私がいうのも僭越ですが、どうかお子さんたちをしっかりみてあげてください。お騒がせをして、すみません」

教室のあちこちから、保護者のすすり泣く声が聞こえてきた。

筆者撮影
山根家に飾られている母子の写真。詩織さんは母の日には、必ずお小遣いからプレゼントを買って贈ってくれた

【次回】「小6女子いじめ自殺」事件に向き合わなかった名物校長は、教育長に栄転した

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