依存性や中毒性が強く効果は期待できない

永田理希『間違いだらけの風邪診療 その薬、本当に効果がありますか?』(ちくま新書)

気分を落ち着かせる鎮静薬として販売されているウット®という商品には、ジフェンヒドラミンのほかに、ブロモバレリル尿素も主成分に含まれています。この成分は、前述したように非常に依存性の強い催眠鎮静効果があり、呼吸抑制作用も強く安全性が極めて低いため、海外では発売禁止されているものです。

国内でも、この成分による急性・慢性ブロム中毒が起きています。保険適用の総合感冒薬カフコデ®Nには1回量に120mg含まれており、ウット®には83.3mg、1日3回の内服になります。同じ成分は、市販薬の解熱鎮痛薬ナロンエース®、歯痛・頭痛薬大正トンプク®にも、1回量に200mgが含まれています。

これらの成分は、適正量で数日の内服であれば問題ないことが多いのですが、これまで説明してきたように風邪症状を軽減、改善する効果は非常に乏しく、依存性・中毒性が強いものです。明らかにデメリットが勝るため、内服するべき風邪薬ではありません。

合法的に手に入り、依存性は覚醒剤や大麻よりも高い

2014年6月に厚生労働大臣から「濫用等のおそれのある医薬品」が通達されました。エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ブロムワレリル尿素、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリンの6成分です。

薬を提供する側(薬局や販売業者)に注意喚起するものですが、受け取る側も注意が必要です。依存性があっても販売数量に制限がされていない成分や商品は、これら以外にも多くあります。インターネット販売では制限なく購入できるリアルもあります。

これらの薬物は合法的に手に入る薬ですが、薬物依存への重症度は、覚醒剤や大麻より高いことが明らかになっています。2020年9月、厚生労働省から公表された医薬品販売制度実態把握調査の結果から、再使用率も高いことがわかっています。

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