バナナジュースの最大の弱点
天候の影響を受けやすいバナナジュースの弱点を克服するため、黒田がまず取り組んだのはホットドリンクだった。しかしこれが意外とむずかしい。どうしてもバナナの味がぼやけてしまううえに、甘みが飲みにくくさせてしまう。
そこで黒田がはじめたのは、ホットミルクだった。バナナジュースと同じで、家で作るのは面倒だが、あれば買ってみたいというニーズがある。シロップを掛けて200円台なので、値ごろ感もある。同じ材料で作れるオペレーションも魅力だった。
しかしこれだけでは、バナナジュースの落ち込みを補うことはできない。3坪という限られた店舗のスペースを活用してできる商品はないか。ドリンクから離れて挑戦したのが、焼きいもや明石焼きといったフードメニューだった。
焼きいもの魅力は、調理がしやすいことだ。火が使えない店が多いので加工はできないが、手間がかからず人気もある。持ち帰りやすいこともあり、一日に30本程度出せばまず残ることはない。
明石焼きは桜上水の店舗でテスト的に始めたものだが、近くに扱っている競合店がない点が大きい。手軽に作れるし、焼きすぎたり時間がたって形が崩れても、ダシに入れて提供したりするので気にならない。香ばしい匂いにつられて買いに来る客は少なくなかった。
「年商1億円」を支えたサイドメニュー
いずれもサイドメニューにはなっても、すべての店舗で販売するだけの看板メニューにはなりえなかった。しかもバナナジュースとの関連に違和感を持ってしまう。
バナナジュース屋が手掛ける商品としてふさわしいものはないか。
黒田が食べ歩きを重ねることで出会ったのが、クレープだった。
もともとクレープは、若者たちの間で持ち帰って食べる商品として人気が高い。生クリームやトッピングが豊富にある印象だが、黒田が面白いと思ったのは、クレープ生地にバターと砂糖を掛けるだけのシンプルなクレープだ。
参考にしたのが、渋谷のあるクレープ屋だった。もちもちしたクレープ生地にエシレバターが基本で、砂糖とレモンやキャラメルを掛けている。これを500円台で提供すれば、より広い層の客を期待できるのではないか。
重要なのは、バナナスタンドの客層が買いやすくすることだった。子ども連れの親にすると、生クリームばかりのものは食べさせたくない。バナナジュースとの相性も悪くない商品に仕立てたかった。