レストランの料理も変わった。同クラブのレストランには「まずい料理」は置いていない。韓俊は「まずい料理を作ってはいけない」と徹底した。なぜなら、まずい料理には原因がある。材料が古いこと、質の良くない材料や調味料を使うこと、技術が伴わないのに最新のレシピに挑戦してレベルに達していない料理を作ってしまうこと……。まずくなる原因をすべてなくせば、料理は確実においしくなる。
さまざまな改革を一つひとつ行っていき、施設とサービスのレベルを上げた。
企業理念はモチベーションアップのためにある
太平洋クラブの各コースにやってくる人間は少しずつ増えていった。すると、入会する人が出てくる。利益が上がったら、韓俊はコースの改善に金をかけ、従業員の給与を上げた。
彼は言う。
「思うに成功した最大の要因はイズムによるものです。従業員のモチベーションが上がったことだと思います」
詳しくは次回の記事に書くが、マルハンには「マルハンイズム」、太平洋クラブには「太平洋クラブイズム」という企業理念がある。従業員は企業理念を信仰するわけではない。モチベーションを上げるためのツールとして使っている。
韓俊はアウトサイダーだった。業界の目を意識することなく、高級ゴルフ場という特色を謳い、施設を改修し、キャディを転勤させ、料理の味を変えた。そして従業員にイズムを浸透させた。アウトサイダーでトップダウンの経営を迅速にやったから、太平洋クラブは再生できたのである。
「同じことをやって、違う結果が出ると考えるのは狂気だ」
アインシュタインが言ったとされる言葉だ。会社を再生させようと思ったら、それまでと同じ経営ではダメだ。大きく変わるしかないのである。それはゴルフ場に限らず、どの業種でも同じことだ。
※『名門再生 太平洋クラブ物語』(プレジデント社)は2022年7月13日発売予定です。