日経平均は「見た目以上に」下落している

周知の通り、日本はGDP比率で見ると先進国の中で最悪の財政状況だ。いわゆる国の借金(国債及び借入金並びに政府保証債務)の残高は2021年12月末で1218兆円。年間のGDPの2倍である。しかも新型コロナ対策で大幅に財政支出を増やしたため、財政を立て直すメドはまったく見えていない。そうした、日本の財政状態への不信感も円安が進む一因だ。急速に進む円安は日本の国力が大きく落ちていることを如実に示している。

「いやいや、日本売りという割には日本株の下落は大きくない」という声もある。確かに129円まで円が売り込まれた4月20日の日経平均株価の終値は2万7217円。年初1月4日の終値は2万9301円だったから7%の下落だ。この間、新型コロナの再拡大や、ウクライナ戦争の勃発など日本経済を大きく揺さぶる問題が起きた割には下げは小さいとも言える。

だが、ここで注意が必要なのは、日経平均株価は「円建て」だということだ。日に日に弱くなっている通貨で表示されている。これまで国内物価が変わらないので、円の使用価値が目減りしていると感じないが、世界の投資家からすれば、円安が進んでいる分、日本の株価は安くなっている。つまり、日本人が気がつかない間に、日経平均は「見た目以上に」大きく下落しているのだ。

「金建て」で日経平均を見ると大幅に下落している

ドル建ての日経平均株価で見てみるのもひとつの方法だが、ドルも通貨である以上、それ自体が弱くなったり強くなったりする。そこで、人類の歴史と共に価値保存に使われてきた「金(ゴールド)」建てで日経平均株価を見てみたらどうなるか。

2021年1月1日(前年の最終売買日の終値)の日経平均株価を100として指数化したもの(青線)と、日経平均株価をその日の金小売価格で割った指数(赤線)を比較してグラフにしてみた。当初はほぼ同じ波形を描いていたが、2021年10月ごろから金建て指数の下落が始まる。円安が進んだ分がこの指数に反映されているとみていいだろう。

図表=筆者作成

4月25日現在、日経平均株価の指数は96.9と1年4カ月前に比べてわずかに下落した水準にすぎない。ところが、「金建て」で日経平均株価をみると76.6。大幅な下落を演じているというのが日本株の実態なのかもしれない。