他者の気持ちを理解できるのは4歳頃から
「心の理論」については、その発達度合いを測る有名なテストがある。
部屋にサリーという少女がいて、彼女はぬいぐるみと遊んでいる。やがてサリーは、そばにあった箱Aの中にぬいぐるみを入れ、部屋を出ていってしまう。すると、次にアンという少女がやってきて、箱Aの中のぬいぐるみを取り出し、別の箱Bに入れ替えてしまう。やがてサリーが戻ってきたとき、もう一度ぬいぐるみで遊ぶために、彼女はどこを探すかというテストだ。
このテストでは、他者(ここではサリー)の視点に立って物事を考えられるかどうか、また、「ぬいぐるみは箱Aにあるはず」というサリーの心を理解できるかどうかを判別する。これまでのデータでは、3歳児の半数以上が「箱Bを探す」と答え、4歳児以上になると、大半が「箱Aを探す」と答えている。もちろん、正解は「箱Aを探す」だ。
このことから、「心の理論」は4歳くらいになってようやく機能することがわかる。逆に言えば、3歳くらいまでは、子どもは大人が思うほど他者の気持ちを理解できないということだ。3歳ともなれば大人と達者に会話する子もいるので、少し意外に思う方もいるかもしれない。
人間が「他者」という存在を認識していく過程
「心の理論」は4歳頃から発達するが、ミラーニューロン自体は生まれたときから脳に存在する。そして、家族やさまざまな人との触れ合いと共に「自分」と「他者」の存在を理解するようになり、共感力を育んでいく。
これには、自身の内部モデルの構築が大きな意味を持つ。人が生まれて初めて内部モデルを構築する際、多くの場合、その対象は母親だ。ミルクをくれたり、抱っこしてくれたりする母親を通して、自分にとって安全基地のようなイメージの内部モデルが出来上がる。