肉、野菜、コメ…相州産で利益を生むサイクルを作る

「だからこそ、地元で循環させたいのです。稲ワラや余ったコメや野菜を、うちが農家さんから頂き、うちからは農家さんに堆肥を提供する。肉、野菜、コメで『相州ブランド』を築いて、これを南足柄市内で高額消費が見込める飲食店や旅館に使ってもらいたいと思っているのです」(長崎さん)

これは「完全な地産地消の形」だ。国際情勢の見通しが悪化する中で、日本の小規模生産者が生き残るには、こうした「循環型生産へのシフト」は待ったなしだろう。

筆者撮影
長崎さんは「稲ワラと堆肥の循環で、牛・コメ・野菜の相州ブランドを発展させたい」と話す

他方、「道の駅」で野菜を売る農家からも、このところの燃料費高騰で「野菜の価格をどう設定していいか分からない」という悲鳴が上がっている。そこには肥料価格も影響する。窒素、リン酸、カリウムは、高収穫を目指す農家に欠かせない複合飼料の3大成分だが、日本はリン鉱石と塩化カリウムも全量輸入に頼っている。塩化カリウムの主な産地はカナダ、ベラルーシ、ロシアだ。海外市況に左右されない農業を目指し、昨今、農林水産省も堆肥などの循環利用を訴えるようになった。

飼料にせよ肥料にせよ、輸入に依存し続ければ、その結果として地元経済を動かすプレーヤーたちを失いかねない。そうなると、せっかく動き始めた「道の駅経済」も成り立たなくなってしまう。すべてはつながっているのだ。

もちろん、行政の力も必要だ。これまでは「民間の努力でやってください」と言えただろうが、耕作放棄地が年々増加する中、もはや座視することはできなくなった。

「住民も驚くくらいの活況です」

「金太郎のふるさと」に話を戻そう。今でこそ、地元のみならず広域から来訪者を集める同駅だが、その道のりは平坦ではなく、開業は2020年6月とコロナ禍に産声を上げた。だが幸いにも緊急事態宣言が解除されたタイミングと重なり、久しぶりの行楽を求めて多くの人が足を運んだ。テレビでも報道され、南足柄市の知名度は一気に高まった。それから2年たった今もにぎわいが続いている。「これでも落ち着いたほうですが、今では住民も驚くくらいの活況です」と南足柄市の広報担当者は語っている。

他方、同駅が開業するまで、地元住民の「道の駅」に対する見方は複雑だった。コロナ禍が住民の心理に影を落とし、「こんな状況でお客は来るのか」「無駄な箱モノを作ってどうするんだ」「赤字が出たら税金で補塡ほてんするのか」といった悲観的な声も少なくなかったという。